2018年6月26日
通訳になる前にやっとけばよかったこと、やらなくて良かったこと
エバンス愛

「通訳になるのにどんな勉強をしたらいいですか?」「あの時あれをやっとけばよかったってこと、ありますか?」という質問をよく受けるので、この記事では
「いい通訳者になるためにもっと早くやっとけばよかった」「これはやったけど、通訳になるにはやらなくてよかった」
ということを書いてみたいと思います。
なお、私がTOEIC700点台の25歳のときから31歳で通訳者として採用されるまでにやったこと、やらなかったことは、こちらに書いています。
・私がTOEIC700点台から通訳になるまでにやった勉強法10選
・私が通訳になるためにやらなかった/必要なかった勉強法10選
コンテンツ
私が通訳者になるまでにやっとけばよかったと思うこと
1.早めに生の英語のトレーニングに移行する
私は、英語のやり直しを本格的にはじめて3年くらいの間、ずっとNHKラジオ講座を中心にやっていました。ひたすらラジオ講座をながら聞き、シャドーイングしてました。その結果、TOEICは980点になりました。
・・・が、「生の英語」は聞けませんでした。
そんな状態でした。
今となってはアホとしか言いようがないのですが、アナウンサーではない普通の外国人が、相手の英語レベルに配慮せずに自由に話す「生の英語」が聞き取れるようになるには、生の英語を聞き取る訓練が必要だと知らなかったんですねー。
だから、NHKラジオ講座などのような「声優さんのくっきりはっきり話す教材用英語」しか使ってこなかったんです。
「生の英語」を聞き取る訓練のために1000時間ヒアリングマラソンを始めたのですが、「もっと早く始めていたら良かった」と今は本気で悔しく思っています。
生の英語を聞き取れるようになるための方法については、生の英語をバッチリ聞き取れるようになるためのリスニング勉強法も参考にしてください。
2.英語でやっているポッドキャストの活用
上記のヒアリングマラソンでは、1日3時間のリスニングを1年間継続して1000時間を達成するのを目標としていますが、教材に収録されている音声だけで毎日3時間は難しいので、教材以外の英語を日々の生活に取り入れるよう指示があります。
で、私はこのヒアリングマラソンをやっていた時、1日3時間を達成するために主にテレビの副音声で英語を聞いていたのですが、NHKニュースはそこそこ分かるようになっても「ドラマや映画はやっぱり難しい!!」とずっと思っていました。
テレビを副音声にして海外ドラマや映画を見つつ「全然わからん・・・これを3時間のリスニング時間に含めていいんだろうか」と罪悪感を抱いてました。
で、今振り返って思うのは、やっぱり海外ドラマや映画の聞き取りは、TOEICのリスニングセクション満点なんかよりはるか上の超難関だということ。単語がポツポツ聞き取れる程度でいいならまだしも、しっかり理解できるようになるには数年間の本格的なトレーニングが必要です。
で、通訳になる少し前に出合ったのがオーディオブックです。オーディオブックは声優さん(あるいは著者)がはっきりと発音してくれるので、ドラマや映画よりだいぶ簡単でした。
たくさんの情報がどんどん流れてくるし、単語も難しくて最初は同じ本を5回くらい聞いてようやく分かるという感じでしたが、だんだん慣れて楽しくなってきて、数百冊は聞きました。
オーディオブックについては、こちらをどうぞ。
・リスニング爆上げ+収入増!英語オーディオブックのメリットと効果5つ
・オーディオブック初心者向け!英語が聞き取りやすい本5選【TOEIC800以上推奨】
・500冊以上聞いた私がお勧めする、洋書オーディオブック15選
・【徹底解説】audibleで楽しみながら英語学習!洋書オーディオブックを買う方法と適したレベル
でも、オーディオブックは「書いた文章を読みあげている」という性格上、やっぱり「教材英語」寄りです。
そして、また出合いました。もっと生の英語寄りで、でもドラマや映画ほど難しくない素材。それが「ポッドキャスト」です。(ポッドキャストとは、ネット上のラジオ番組のことです)
通訳をやり始めて数年後に出会ったポッドキャストですが、通訳を始める前に聞く習慣があったらもっと違ったかもと思っています。
英語学習者用のポッドキャストもいいのですが、「生の英語寄り」という観点から私がお勧めするのは(そして「あの頃やっときゃよかった」と心から思うのは)英語学習者用ではない、普通のリスナーに向けた番組です。
たとえば、日本のラジオ番組っていうと、お笑い芸人、ミュージシャン、経済評論家、アスリートなどいろんな人がいろんな番組をやってますよね。あれの英語版を聞くということです。
ポッドキャストは話し言葉なので、生の英語が聞けます。ですが、映画やドラマと比べると、格段に聴きやすいです。教材の英語では聞くことのない、ネイティブがよく使う口語の言い回しも、私はポッドキャストを通じてたくさん学びました。
ポッドキャストは、言いよどみや繰り返しなど、適度な無駄(いい意味で)があり、話についていきやすいです。ただし、対談の番組は、話がわかりにくくなったりスピードが上がる傾向があるので、最初は一人のパーソナリティがリスナーに語りかける形式の番組を探して聞いてみるといいと思います。
ジャンルは自分の興味があるものを聞くのがお勧めです。仕事関連でもいいし、趣味のテーマでもいいし。ほんと何でもあります。
ちなみに、ポッドキャストって無料で聞けます。ネット上でパソコンで聞くこともできますし、iPhoneやウォークマンなどのmp3プレーヤーでも聞けますよ。
Podcastで自分の目的や趣味に合った番組を探す方法は、こちらに書いています。
3.通訳トレーニング法を学び、実践する
私はよく「愛さんは通訳学校に行きましたか?」「通訳講座を検討していますが、受けた方がいいと思いますか?」と聞かれます。通訳学校はもちろん通わないより通った方がいいに決まっているので、行けるんだったら行ったらいいと思います。
私自身は通訳養成講座には通わなかったので、私にとってはそれで正解だったのかもしれませんが、やはり通訳トレーニングのやり方は学んでおけば良かったと思っています。通訳スクールに通うにしろ通わないにしろ、結局は一人でどれだけ練習するかが一番大事なので。
通訳専門のトレーニングではありませんが、口頭瞬間英作文は、通訳訓練としてもすごく役に立ちました。「日本語を読んでその場で訳出する」のは、今は得意です。
が、「英語を読んでその場で訳出する」のは苦手です。そういう訓練が不足しているからです。
だから、通訳になった後で、通訳トレーニングの通信講座を受けました。4時半に起きて、仕事に行く前に1時間頑張ってトレーニングをしていました。
通訳勉強法についてはいろいろ知ってるつもりでいましたが、実際に通訳トレーニングをはじめてみると、「こんなトレーニング法あるの!」というものがたくさんあり、久しぶりに新しい勉強法にワクワクしながら取り組みました。
で、「なんでこれをもっと早くやらなかったかなー」と激しく後悔しています。
4.時間管理術を学ぶ
これは英語ではなく心構えの問題なのですが、時間の使い方が下手だったなーと思っています。
当時は、確実に今より睡眠時間も多かったし、勤務時間も少なかったです。ブログもメルマガもやってなかったし、起業もしていませんでした。やろうと思えばもっともっと英語時間は取れたはずで、1日4時間でも5時間でも、やろうと思えばできたと思います。
「フルタイムで働いてるから、時間ないのは仕方ない」「今は仕事を見つけるのに忙しくて、英語どころじゃない」じゃなく、時間を見つける工夫が足りなかったと。
今は、オーディオブックやポッドキャストで時間管理術や目標管理術のノウハウを学んでいるのですが、これをあのとき知っておけば・・・ということがたくさんあります。
私のいろんな挫折経験と、そこで得た知識をもとに、少し前に時間管理と目標達成のオリジナル教材を販売したのですが、「忙しい忙しいと思って過ごしていたけど、勉強時間が確保できるようになった!」「自分の人生にとって大切なことをこんなに真剣に意識したことはなかった!」と大好評をいただきました。
現在はその教材は販売終了していますが、夫と一緒に運営しているNO BORDERSというコミュニティで時間管理やモチベーション管理についてお伝えしています。詳細はメール講座の読者さんにご案内しています。メール講座は不要になればすぐ解除できますので、ご興味があればどうぞ。
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私が通訳者になるまでにやらなくて良かったなと思うこと
では、ここからは「やらなくて良かった」コーナーです。
1.英字新聞の購読
TOEIC700点、800点台の頃に英字新聞を購読していたことがあるのですが、ほとんど廃品回収に直行でした。ほんともったいないことしました・・・
辞書で一生懸命知らない単語を調べつつ、1日に1記事くらい読むのが精いっぱいでした。しかも、それを毎日やったわけでもないですし。
今だったら、まともに読めもしない英字新聞に月々3,000円も払うくらいなら、ネットでいくらでも手に入る英文記事を使うと思います。
ただし、外資系企業で秘書兼翻訳の仕事をしていた時(TOEIC980点を取得して数年後)は、上司のお古の英字新聞を持って帰って読んでましたが、その頃に自分で購読していたらもっと有効活用できたと思います。
英字新聞に載っていた翻訳コンテストにもその時に応募していました。
でも、やっぱり毎日そんなにたくさんは読めないので、英字新聞を購読するとしても、週刊で十分だと個人的には思います。
2.英語教授法
英語を教えるという目標がない人にも、英語教授法の講座を検討する人が結構いるようなのですが、まあ、通訳になるには全然関係ないです。というか、英語の先生になりたい人以外には全く勧めないです。
私自身は、英語教育に携わる者としてスキルアップのために受講したので、そのコース自体に意味がなかったということではありません。「通訳になるには」全く不要だったということです。
私がカナダで英語教授法のコースに通っていた時、日本人は私一人で、あと韓国人の女の子が一人いました。
残りは、最も多かったのがカナダ人(英語ネイティブか、仏語ネイティブの英仏バイリンガル)とアメリカ人、そして英語がめちゃくちゃ上手なオランダ人でした。まあ、英語の先生になるコースだから英語がネイティブレベルの人ばかりで当たり前なのですが・・・
で、その韓国人の彼女は、英語の先生になりたいのではなく、将来は通訳になりたいと言っていました。でも、語学コース(普通の語学留学生向け)は簡単すぎてレベルが合わないので、英語教授法のコースを受講していると言っていました。
英語教授法のコースはノンネイティブも受講可能でしたが、受験資格がTOEIC900点以上でした。入学試験には英語の文法や語法を説明する筆記試験と、口頭試験がありました。
生徒の大半はネイティブレベルなので、授業では英会話の練習なんかは当然全くないし、英語の「教え方」のスキルを高めるための講義やディスカッション、グループワークばかりです。
また、併設されている語学学校の実際の授業を見学して、その教授法についてレポートを書いたり、模擬授業(いわゆる教育実習)もありました。課題が多く、修了試験の準備も大変で、ネイティブでもドロップアウトする人がいました。
私は「もう嫌だ、辞めようか」と何度も何度も思いながらも何とか頑張りましたが、韓国人のクラスメイトは途中でドロップアウトしてしまいました。
私にとってはとてもいい経験になりましたが、このコースのおかげで英語が上手になったか、通訳になるのに役立ったかと言われれば、そんなことは全くないです。
それよりも、英語を教えるということにそれほど興味も情熱もないのに、それについて英語でレポートをたくさん書いたり、ネイティブに向かって英語で模擬授業をするのはかなりしんどいです。
なので、英語教授法のコースは、英語の先生を目指す人や教えるスキルを向上したい人以外にはかなり損な苦労になってしまうと思います。
まあ、英語教授法だけでなく何の分野で留学しても、興味のないことを(日本語で勉強するのもつまらないだろうに)英語で勉強するのがしんどいのは、きっと同じですね。
ただし、特に理系分野で留学した場合、その分野に詳しい通訳者として将来活躍するのに役立つ可能性はあります。一方、英語教授法は、通訳としてキャリアをスタートするのに有利になる使い道はほぼないですね、残念ながら。
まとめ
以上、私が通訳者になるまでにやっとけばよかったと思うことは
・早めに生の英語のトレーニングに移行する
・英語でやっているポッドキャストの活用
・通訳トレーニング法を学び、実践する
・時間管理術を学ぶ
私が通訳者になるまでにやらなくて良かったなと思うことは
・英字新聞の購読
・英語教授法
でした。将来は通訳を目指したいと思っている方のお役に立ったら幸いです!