2017年9月24日
1日に何時間勉強すれば英語が上達しますか?に対する通訳翻訳者の答え
エバンス愛
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「1日に何時間くらい勉強すれば、英語が上達するのでしょうか?」という質問を、私は本当によく受けます。
私はこのまま勉強を続けても、上手にならないのでは・・・?
一体あとどれくらい続けたら、私は英語が話せるようになるのか・・・?
そんな迷いで、英語学習に身が入らない人も多いかもしれません。
一体、あなたは1日に何時間勉強すればいいのでしょうか? その答えは、以下で全く変わります。
・英語レベル
・英語で何を目指しているのか
・正しい方法で勉強しているか
・どれだけ集中して勉強しているか
・短期集中なのか、ゆっくりのんびりなのか
それでも、「この勉強をいつまで続けたらいいのか・・・」と手探りで進むより、おおまかでもいいから何らかの「目安」があったらいいですよね。
「だいたいこのくらいの英語学習を重ねたら、こんな感じなんだ」ということが分かれば、今後の目標も立てやすいはず。
というわけで、このページでは、私自身の経験やクライアント、読者さんの変化をふまえて、平均的な日本人英語学習者(TOEIC500点程度)の、英語学習時間の目安と到達できるレベルについてお話ししたいと思います。
言うまでもなく、個人差や例外はありますが、この記事を読み終わる頃には「あとこれくらい英語を勉強したらいいんだ!」という目安をつかめ、今後の学習計画が立てられるはずです!
コンテンツ
1日の英語の勉強時間と、それぞれの1年後の変化の目安
まず、1日にどれくらい英語を勉強すると、1年後にどんな変化が起きている可能性があるか、ざっくり目安で示してみましょう。
1日10分の英語学習:「気休め程度」
すきま時間にちょこっと英単語アプリで単語を覚えたり、週1回英会話レッスンを受けている(レッスン以外の勉強時間はなし)というイメージ。
日本の(自称)英語学習者の9割は、この「1日10分コース」です。
これを1年間続けた後の変化は、正直言ってほとんどありません。
厳しいことを言うようですが、「やらないよりはマシ」「気休め程度」です・・・
なお、1時間の英会話レッスン週1で受けて、レッスン以外何もしてない場合は、この「1日10分」カテゴリーに分類されます。ただし、「外国人と話す度胸だけはついた」という変化を感じる人は多いです。
1日30分の英語学習:「現状維持」
毎日ちょっとした時間に英語を聞いたり、すきま時間で単語本や英会話フレーズ本をチェックしているイメージ。
本人的には、「結構頑張って英語を勉強している」という認識です。
今まで全く勉強していない人が毎日30分やれば、多少の進歩は感じるかもしれません。でも、今までもそこそこ勉強してきた人であれば、現状維持程度です。1年後の変化もほとんど感じられないでしょう。
TOEICは、残念ながら1年後にもほとんど点数が変わらないはず。
1日1時間の英語学習:「限りなくゆるやかな上達」
通勤時間に英語を聞いたり、机での勉強時間を確保したりと、毎日の勉強時間を決めて勉強を積み重ねているイメージ。
1日1時間になると、周りから見ても「本格的に勉強している」という印象です。この時点で、日本の英語学習者のトップ1割に入ります。
長いブランクがあった人の場合、分かる単語が増えたなど、ちょっとした変化は感じるでしょう。今までも英語を勉強してきた人の場合は、上達はしますが自分の実感としては分からないほどのわずかな変化です。
TOEICスコアは、1年後に50点から100点アップくらい。
1日2時間の英語学習:「そこそこ上達」
毎日1時間以上英語を聞く習慣に加えて、それ以外の時間に文法や単語などに取り組んでいるイメージ。
長いブランクがあった人なら、1年後には結構変化が感じられるはずです。今までも勉強してきた人なら、「ちょっとは上達した・・・かも?」と少し成長が実感できる程度です。
TOEICスコアは、1年後に100点から200点アップくらい。
1日3時間の英語学習:「上達を実感できる」
毎日2時間以上英語を聞く習慣に加えて、それ以外の時間に文法や単語、シャドーイング、英会話などを着実に積み重ねているイメージ。
長いブランクがあった人の場合、かなり変化します。ブランクがない人でも、突然視野が広がったように感じる、いわゆる「ブレイクスルー」体験も一度は訪れると思います。
TOEICスコアは、1年後に200点から300点アップくらい。
本気で英語力を上げたいなら、できれば1日3時間の勉強時間は確保してほしいところです。ただし、机で3時間である必要はなく、通勤時間のながら聞きなども含めてOKです。
1日5時間の英語学習:「だいぶ別次元に変化」
留学生並に毎日のかなりの時間を英語の勉強に使っているイメージ。
長いブランクがある人は別人レベルに変化すると思います。変化は自分でもはっきり体感できるし、ブレイクスルー体験も普通にあるでしょう。
ただし、これだけ時間が取れる人は時間に余裕があり、ダラダラ勉強しがちです。なので、1日5時間を1年間本当に集中して英語に費やすことができるなら、という条件付き。
何時間くらい勉強したら、どのくらいの英語力になるのか?
じゃあ、あなたが目指す英語レベルに到達するには、1日にどのくらい勉強して、それをどのくらい続けたらいいのでしょうか?
スタート地点を日本在住の平均的な社会人の「片言英会話レベル(TOEIC500点程度)」と想定して、何時間勉強したらどういう英語力が身につくのか、おおまかな到達イメージと、1日に費やす勉強時間ごとの所要年数を書いてみます。
「○時間勉強したらTOEIC○点になる」ということではなく、スコア重視の勉強をすればもっと早く到達できます。私の主観による部分も大きいので、あくまでもひとつの目安として考えてください。
なお、前もって言っておきますが、この先を読んだら心が折れるかもしれませんので、覚悟して読んでください(笑)。でも、想像するほど大変ではないので、安心してくださいね。その理由は最後に書きます。
海外旅行で自分で最低限のことができるレベル(TOEIC700点程度)
★必要な勉強時間の目安:700時間
ある程度「英語ができる」と言えるレベルの最低ラインがこのあたりです。多くの人が目標にする、「海外旅行でツアーでなくても最低限のことが自分でできるレベル」です。旅行先のホテルやレストランでは、たいていのやりとりはできます。
ただし、このレベルで海外旅行に行った人はみんな「もっと英語ができたらもっと楽しめるのにな〜!」と歯がゆい思いをします。
もう「初心者」ではありませんが、かと言って、テレビのニュース英語もほとんど分からないし、自分の言いたいことも全然上手に伝えられません。
学習者本人としては、すごく中途半端でフラストレーションがたまるのが、この「TOEIC700点レベル」です。
このレベルに達するのに必要な期間の目安(概算)
1日10分コース: 12年
1日30分コース: 4年
1日1時間コース: 2年
1日2時間コース: 1年
1日3時間コース: 8ヶ月
1日5時間コース: 5ヶ月
ごく簡単なメールや仕事の会話なら英語でできるレベル(TOEIC800点程度)
★必要な勉強時間の目安:1,000時間
英語を使って仕事がしたいと思う人がまず目指すべきレベルです。英語力が必要な仕事の応募条件として挙げられる最高レベルがTOEIC800点程度で、それ以上(900点など)を掲げている求人はほとんどありません。
ただし、このレベルだと、英語のメール処理、簡単な翻訳なら(時間をかけたら)何とかできるという程度です。
相手が多少手加減してくれれば、ネイティブと込み入っていない会話ならできますが、英語のディスカッションを正しく聞き取って自分の意見が発言できるといったことは難しいです。
このレベルに達するのに必要な期間の目安(概算)
1日10分コース: 17年
1日30分コース: 6年
1日1時間コース: 3年
1日2時間コース: 1年半
1日3時間コース: 1年
1日5時間コース: 7ヶ月
ハイレベルな業務でなければ英語で仕事ができるレベル(TOEIC900点程度)
★必要な勉強時間の目安:2,000時間
世間的には「英語を武器に仕事ができるレベル」です。英語の読み書きは、難しい英雑誌などでなければ問題ありません。英語でのコミュニケーションも、流暢ではありませんが当たり障りなくできます。
英語ニュースを聞いておおまかに理解できはじめるのが、だいたいこのレベルです。
一方で、ネイティブ同士のくだけた会話の聞き取りにはまだまだ苦労します。映画は、字幕なしで楽しむのは厳しい(大多数の人にはチンプンカンプン)です。
本人としては、スコアによる周囲の期待と自分の英語のできなさとのギャップに最も悩むレベルでもあります。
このレベルに達するのに必要な期間の目安(概算)
1日10分コース: 34年
1日30分コース: 12年
1日1時間コース: 6年
1日2時間コース: 3年
1日3時間コース: 2年
1日5時間コース: 1年半
以上は、私の経験に加えていろんな人の話や状況を総合しておおまかに目安を書きましたが、ここより先はサンプルが身近にあまりないため、私自身の事例で述べます。
なお、以下は純粋な勉強時間だけでなく、仕事での英語業務の時間も含めています。
英語の会議(授業)を理解し、英語でディスカッションできるレベル
★私の通算英語学習時間:5,000時間
私がカナダ(フランス語圏ですが)にワーキングホリデーに行こうと思った頃の通算学習時間が5000時間くらいでした。
留学の手続きや面接、渡航での英語に問題はありませんでした。英語教授法の授業を現地の英語ネイティブに混じって受けましたが、授業やテストはちゃんと理解でき、ディスカッションもたくさんしました。
英語でレポートを書くのは初めてでしたが、あまり苦労なく書けました。もちろん、所々間違いがあったり、ネイティブらしい英語からは程遠い英語だったと思いますが、自分の意見をきちんと表現することはできました。
「英語の電話会議などで正確に内容を聞き取り、しっかりと自分の意見を英語で言える」という、仕事で英語が必要な多くの人が目指すスキルが身につくのは、だいたい5000時間あたりかなと思います。
このレベルに達するのに必要な期間の目安(概算)
1日10分コース: 85年
1日30分コース: 30年
1日1時間コース: 15年
1日2時間コース: 7年半
1日3時間コース: 5年
1日5時間コース: 3年
翻訳の仕事を自信を持ってできるようになったレベル
★私の通算英語学習時間:7,000時間
少し込み入った翻訳や英文メールのやりとりでも、ネイティブレベルとは言えないものの「この英語で大丈夫だろう」と自信を持ってスピーディーに翻訳の仕事がこなせるようになったのがこの頃です。
このレベルに達するのに必要な期間の目安(概算)
1日10分コース: 119年
1日30分コース: 42年
1日1時間コース: 21年
1日2時間コース: 10年半
1日3時間コース: 7年
1日5時間コース: 4年
英語に不自由しなくなったなと思えたレベル
★私の通算英語学習時間:10,000時間
読む・書く・話す・聞くの4技能のどれも一応は不自由しなくなったと思えたのはこの頃です。通訳として採用されたのもこの時くらいです。(なお、10,000時間程度の勉強時間では、通訳者としてはド素人の中のド素人レベルです)
私自身は、英語のやり直しを始めて10,000時間に到達するのに8年近くかかったので、平均したら1日4時間くらいの勉強時間だったことになります。
このレベルに達するのに必要な期間の目安(概算)
1日10分コース: 170年
1日30分コース: 60年
1日1時間コース: 30年
1日2時間コース: 15年
1日3時間コース: 10年
1日5時間コース: 6年
映画が字幕なしでも楽しめるレベル
★私の通算英語学習時間:15,000時間
「字幕なしで映画を楽しむ」は多くの人が憧れますが、これは皆さんが思ってる以上に相当ハードル高いです。「ネイティブ同士のくだけた会話のリスニングが難しい」という人は多いですが、その数倍上を行く難しさです。
これだけ時間をかけても「だいたい分かる」に過ぎず、全部は分かりません。内容によっては6割くらいしか分からない映画もあります。
ここを本気で目指すのか、その価値があるのか、考えた方がいいかもしれません。
このレベルに達するのに必要な期間の目安(概算)
1日10分コース: 255年
1日30分コース: 90年
1日1時間コース: 45年
1日2時間コース: 22年半
1日3時間コース: 15年
1日5時間コース: 9年
通訳としてある程度自信を持って仕事ができるようになったレベル
★私の通算英語学習時間:17,000時間
通算10,000時間で通訳者としてド素人からスタートし、ようやく一人前になったのがこのくらいです。通訳を始めて5年目くらい。長い道のりでした。
私はよく「通訳の仕事を『私にやらせてください!』と自信を持って言えるレベルになったら、やってみたいのですが」という相談を受けます。
でも、「自信を持って通訳の仕事が引き受けられるようになったら通訳やりたい」なんて言ってたら、その時期が来る前にお墓の中です。
このレベルに達するのに必要な期間の目安(概算)
1日10分コース: 289年
1日30分コース: 102年
1日1時間コース: 51年
1日2時間コース: 25年半
1日3時間コース: 17年
1日5時間コース: 10年
机での勉強時間だけが勉強じゃない
いかがでしょうか?
TOEIC500点程度をスタート地点とした計算ですので、あなたの状況とは多少違うと思いますが、だいたいどのくらいの勉強を何年くらいやればいいのかという目安がつかめたでしょうか。
きっと、あなたの顔は今青ざめていると思います。
「えっ、こんなにやんないといけないの?Σ(゚д゚;)」と。
あなたが目指す英語レベルによっては、
「その頃、もう私とっくに死んでるじゃん・・・
てか、もう来世で違う人生だわ||||||||||凹[◎凸◎;]凹||||||||||」
という場合もあるかもしれません(笑)
でも、あまりがっかりしないでいただきたいんです。
私の現在の通算学習時間は20,000時間は超えていると思いますが、私の感想は「ものすごく苦しい道のりでした」とか、「2万時間、死ぬ気で勉強しました」みたいな感じでは全くないんです。
2万時間という数字も、この記事を書くにあたって過去の記憶をたどって計算していったら通算2万時間だった、というだけです。2万時間やろうと思っていたわけではありません。
毎日英語を習慣にしていたら、勝手に2万時間になった。
ただただ、それだけなんです。
英語を習慣にすることについては、以下の記事も参考にしてください。
「英語を習慣にする」ということなくして、毎日「よし、英語の勉強するぞ!」というモチベーションだけでは、1000時間すら到達するのは無理です。(モチベーションで勉強している人の多くは、1日10分コースです。)
逆に、習慣になってしまえば、英語はつらいことではなくなるんです。あなたは、毎日歯磨きをすることを「つらい」とは思わないですよね。それと同じ。そして、あとは自動的にどんどん時間が積み上がっていきます。
そのために私がしている工夫は、「耳が暇な時間」を徹底的に活用することです。
毎日の自分の時間の使い方に注意を配り、目と手はふさがっているけど耳は空いている時間を洗い出し、英語を聞くと決めています。たとえば、運転中、家事をしながら。
上記の時間は、机での純粋な勉強時間ではなく、「ながら聞き」の時間も入っています。通勤や家事、お風呂、散歩などの時間を使って、少しずつ英語のインプットを増やしていってください。
ながら聞きについては、こちらのページも参考にしてくださいね。
ながら聞きを含めても良いなら、1日2時間とか3時間という数字も、途方もないものではなく現実的な数字として見えてきませんか?
まとめ:ブレイクスルーの目安は1000時間。1日3時間で1年。
私が「毎日どのくらい英語の勉強をしたらいいですか?」という質問を受けると、いつもこう答えています。
「ある程度上達を望むんだったら、1日3時間が一つの目安です。私は自分の生徒さんにはいつも『1日3時間を目指しましょう』って言ってます」
私自身、英語のやり直しを始めたとき、「英語学習では、1000時間程度でブレイクスルーが起きると言われています。まずは、1日3時間、1年で1000時間を目指しましょう」という目安を何かの本で読みました。
「1000時間を1年でやるなら、1日3時間も必要なのか・・・orz」と、それまで英語学習にいかに甘い気持ちで取り組んでいたかを思い知らされました。
最初は、1日3時間なんて絶対無理!と思っていましたが、3時間はやらないとたいしてレベルが上がらないんだと現実を知ったので、ながら聞きを含めて何とか3時間を捻出できるようにいろいろ工夫してきました。
そしてその結果、2万時間を積み重ねた今があります。
正直、1日3時間はハードル高いです。フルタイムで働いていてお子さんがいたりしたら、どう頑張っても無理という人もいると思います。だから、「絶対に3時間でないとダメです」と言っているわけではありません。
あくまでも理想はそこに置いて、工夫しながら少しでも3時間に近づけましょうということです。
そうやって時間を積み重ねていけば、日々の積み重ねはわずかでも、それは積もり積もって、私たちが英語で得られる楽しみや自由を支える力強い土台になってくれます。
ぜひ、あなたの毎日の生活を見直して、英語が聞ける時間はないか、探してみてください。私たち忙しい大人がある程度の英語力を身につけようと思ったら、「ながら時間」の活用は絶対に欠かせませんから、耳が暇な時間は積極的に活用してください。
そして、一日でも早く、目標レベルの到達に向けて英語時間を積み重ねはじめてくださいね。
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