2020年8月22日
初心者から翻訳家になれますか?ゼロからデビューまでの最短ルート
エバンス愛
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「翻訳の仕事に憧れているけど、翻訳学校に行く時間とお金の余裕が今はない。独学で翻訳家になれる?」「初心者からでも、翻訳者になれるの?」「どんな勉強をしたらいい?」と、悩んでいる人は多いと思います。
この記事では、初心者がゼロから最終的に翻訳の仕事にたどり着けるまでにどんな勉強をどういう順番でやればいいか、その最短ルートを示します。
コンテンツ
初心者が翻訳の仕事ができるようになるための勉強法
現時点で初心者の人が翻訳の仕事ができるようになるために、何をどういう順番で勉強したらいいか? 最短ルートのモデルは、以下です。
(中学レベルの単語は身についている前提で)
1.中学文法の復習
↓
2.英検2級程度の単語
↓
3.高校文法の復習
↓
4.英文和訳練習(日英翻訳を目指すなら、英作文練習)
↓
5.転職活動、トライアル応募
まず文法の復習を真っ先に
まず、翻訳者を目指すのであれば、文法の復習を真っ先にすることをお勧めします。翻訳は、(特に専門分野を持たない人の場合は)文法を完全にマスターしていないと非常に厳しいです。
翻訳って、長~~い文章を読んで、構文を取って、修飾部分の切れ目を判断して、正しく訳さないといけないので。
お勧めの文法問題集は、たとえばこちらです。すでにお持ちのものがあれば、別にこの問題集である必要はありませんが、分厚くない問題集を選んで、最低でも3回繰り返して知識を定着させることをおすすめします。
中学英語の復習(中3まであります)
高校英語の復習
ちなみに、 「分厚い文法参考書を最初のページからやり込む」という勉強法はNGです!
分厚い文法参考書は、「辞書」として使うのが正しい使い方です。つまり、分からないことがあったら索引からその項目だけを調べるという使い方です。最初から最後まで全部チェックする必要はありません。辞書をAからZまで、全部の単語を覚えるなんてやり方はしませんよね。それと同じです。
分厚い参考書は、最初から最後までやり込むのはダメですが、文法や構文の疑問がある時に調べるのに重宝します。私のおすすめは、Evergreenとロイヤル英文法です。
翻訳者に必要な単語レベルについて
単語の復習は、まずは「英検2級程度」と先ほど書きましたが、「え、単語は英検2級程度でいいの?」と思うかもしれません。でも、翻訳にはハイレベルな単語をたくさん知っている必要はありません。
知らない単語は、調べればいいんです。いずれにしても、単語の定義を一つ覚えている程度では、どうせ翻訳の過程で結局辞書を引くハメになります。
最終的にプロとしてやっていくには、もちろんたくさんの単語を知っているに越したことはありません。「英検1級レベルの単語力を身につけてから、それから翻訳の勉強をしよう」とかは、完全に遠回りルートです。
英検2級程度の単語を知っている人なら、翻訳はできます。
単語もお勧め本を挙げておきますが、すでにお持ちのものがあればこれでなくても構いません。
なお、自分が携わりたい分野が決まっている場合は、その分野の単語はある程度身につけてください。「4.英文和訳練習」の次にやりましょう。
たとえば医薬分野だったら、以下のような分野に特化した単語本を使うと効率がいいです。
文法の復習が終わったら、翻訳の練習
次にやるべきことは、「翻訳」ですね。「は?」という感じかもしれませんが、翻訳は別に翻訳の仕事につかなくてもできます。高校生用の英文解釈の問題集でもいいし、翻訳コンテストでもいいし、翻訳という作業をたくさんしてみましょう。
多分、最初はほんの数行を訳すにも悲しいくらい時間がかかった上に、悲しいくらいへんてこな翻訳しかできません。訓練で少しずつ上手になるしかないので、解説などを読んで自分で課題を認識し、何度も挑戦してください。
翻訳(英文和訳)トレーニングに使える高校生用のお勧め問題集は、以下です。
高校初~中級
高校中~上級
この「英文標準問題精講」の方は、私が高校生の頃からものすごく有名で、みんな持ってました(初版がなんと1933年!)。高校時代に使ったことがある!という方も少なくないのではないでしょうか。
私は、塾でこれをやらされるのがイヤでたまりませんでした。そんな私が今や翻訳を仕事にして、この本を翻訳者志望の人に推奨しているなんて、不思議なものです。
高校生が日本語をこねくりまわして翻訳するのは今となってはどうかと思いますが、翻訳の仕事をしたい大人が英文和訳の練習に使うには非常に良い本です。
英作文(和文英訳)のトレーニングに使えるお勧め問題集は、これです。
また、翻訳コンテストも非常にお勧めです。私は、翻訳講座等で専門的な勉強をしたことは一度もないのですが、新聞の翻訳コンテスト(無料)に応募し、解説をじっくり読んで復習をするということを繰り返しながら、翻訳のスキルを身につけました。
◆週150円で翻訳を独学 -The Japan News翻訳コンテスト
上記の翻訳コンテストはTOEIC900点程度以上の上級者向けなので、まだ難しいという場合はアメリア翻訳コンテストがお勧めです。
アメリアは有料会員にならなければ様々な特典(求人情報など)を利用できませんが、この翻訳コンテストは、会員でなくても応募できます。コンテスト開催中は、サイトのトップページに「○○翻訳コンテスト無料開催中」というコーナーが現れますので、そこから応募できます。
その他の翻訳コンテスト情報は、◆翻訳コンテスト情報まとめ!気軽な英語の力試しに【2023年5月最新版】も参考にしてください。
転職活動、トライアル応募について
最後の「転職活動、トライアル応募」を見て、「まだ翻訳の勉強を始めてないのにいきなり?無理でしょ」と思うかもしれません。確かに、この時点で採用される可能性は高くないと思います。
でも、ここから「まだ私はレベルが低いから」「もっと翻訳の勉強をしてから」ってズルズル先延ばしにする人があまりに多いので、あえてこう書いています。
トライアルは、一度失敗すると同じ翻訳会社への再挑戦は1年間できないなど、制限がかかってしまうことがあるので、闇雲にトライアルを受けまくってはいけません。
それでも、「実際に応募するとしたら」という視点で業界を早い時点で実際にチェックすることはとても大事です。
私は、フルタイムで働ける人は、競争率の高い在宅翻訳(フリーランス)を目指すより、派遣で翻訳の仕事をゲットすることをお勧めします。その場合は、求人はその時限りしか出ていないので、定期的に求人情報をチェックし、派遣会社に登録しに行ってみましょう。
実際に仕事を探して、応募できそうな求人やトライアルはどこにあるかと実際に検討する過程で、自分に本当に足りないものが初めてよく見えてきます。
それに、もしかしたらこの時点で採用される可能性だってあります。応募しなければ可能性はゼロです。「準備ができてから応募しよう」と思ってたら、いつまでたっても動けません。
翻訳者志望なら、リスニングは今日から毎日ずっとやる!
そして、今日から英語を毎日たくさん聞いてください。最低1時間、できれば2時間以上。ながら聞きでいいです。
つまり、机での勉強時間はすべて単語、文法、翻訳練習に捧げ、それ以外の時間でリスニングしてください。
「2時間どころか1時間も無理!」と思うなら、◆英語の勉強する時間がない人集合!誰でも毎日1時間確保できる方法を読んでみてください。
翻訳にリスニング力は直接関係ありませんが、英語を聞きながらその語順で理解する能力を身につけることは、リーディングにも翻訳にも大いに役立ちます。単語や文法の知識の補強にもなります。自然で英語らしい英語の組み立て方も身につきます。
私の翻訳チームのメンバーを見ていると、大きな差はインプットの差でついているように見えます。英語をたくさんインプットしてきたであろう人は、そもそもの理解力が高いです。訳し方がちょっと直訳調だったりという問題点は、そんなに矯正が難しいことではありません。
でも、英語のインプット量が不足している人は、いくら訳し方のテクニックを磨いても、単語力を上げても、なかなか伸びません。
英語を読む時間がたくさん取れればそれに越したことはないですが、仕事や育児に忙しいと、そうもいかないものです。
だから、勉強時間の確保が必要ない「ながら聞き」を取り入れてください。その意味で、翻訳者志望の人にも必ずリスニングをやるように私はおすすめしています。
でも、産業翻訳者が目標なら、ある程度上級になれば、リスニング力そのものをどんどん上げていくというイメージよりは、レベルを維持してインプットの量を確保するということが重要だと思います。そして勉強時間は精読、多読、翻訳に費やす。
最後に、中級者さんまでの場合は、将来の目標が翻訳者だとしても、シャドーイングやディクテーションはやって損はないトレーニングです。高い英語力を手に入れるための体力づくりの一環と考えてください。
で、体力が十分ついた人はいつまでもぬるま湯で体力づくりしてないで、目的に直結したトレーニングをやりましょう!ってことですね。
リスニングの勉強については◆正解リスニング学習法-初級者・中級者はこうリスニング力を伸ばせ!もどうぞ。
翻訳者になるために勉強以外の大事なこと
翻訳の勉強の基本的なことはここまででだいたい網羅しましたが、ここからは、翻訳の勉強そのもの以外にやるべきことを挙げていきます。
翻訳セミナーや勉強会、懇親会で翻訳者の話を聞く
翻訳者を目指す人向けのセミナーや勉強会って探せばたくさんあるので、可能なら参加してみてください。翻訳学校が主催しているセミナーもありますし、現役翻訳者のグループが企画する勉強会やパーティーもよく開かれています。
そういう場所に行って話を聞いてみるだけで、翻訳という仕事についていろんなことが分かると思います。勉強のやり方や将来の方向性も見えてくるはずです。
たとえば、こんな団体や翻訳学校がセミナーや説明会を開催していることがあります。
・日本翻訳者協会(JAT)
・日本翻訳連盟(JTF)
・サン・フレアアカデミー
・ILC国際語学センター
セミナーの内容は、翻訳という仕事との向き合い方や仕事を得る方法であったり、翻訳者が知っておくべき便利なMicrosoft Wordの機能の使い方だったり、あるいは具体的に翻訳のテクニックだったりと様々です。
(もちろん、翻訳学校主催の場合は結局は集客が目的なので、それを理解した上で参加してください)
まだ翻訳の仕事をしていなくても参加できるものがほとんどですので、積極的に参加してみることをお勧めします。
私も、これまでいろんな翻訳セミナーに参加しましたが、セミナーの後に懇親会もあることが多いので、現役のフリーランス翻訳者の方たちと情報交換もできて非常に有意義でした。
また、翻訳学校だけでなく、派遣会社も英語を活かして仕事をしたい人を対象にセミナーをやっていたりします。私の場合、派遣会社が主催する「英語を活かすお仕事の現状」というセミナーに参加したことがきっかけで、外資系企業での秘書兼翻訳の仕事を得ました。
自分の経歴の棚卸し
そして今のうちに、「今までどんなことを経験して、どんなスキルを身につけてきたか」を棚卸ししておいてください。たとえば、事務の仕事をしていたのであっても、ただの「事務」で片付けないで、その仕事に含まれていた内容を全部書き出してください。
一言で「事務」と言っても、会社によって全然違います。電話応対や郵便物の仕分けといった業務だけでなく、英文メールの読み書きや簡単な翻訳も含まれたかもしれません。そういった、今後自分が実際に求人に応募した時にアピールできそうな項目をきちんと洗い出しておきましょう。
「いや、英文メールって言ってもたいしたこと書いてないし」「月1回くらいだったし」とかいう遠慮と謙遜は全く必要ありません。転職活動の時は、「私は前職では英文メールの読み書きを業務としてやっていました」って堂々と言えばいいんです。
当たり前ですが、月1回しか英文メールを書いてないのに「毎日書いてました」って事実とかけ離れた嘘をつくのはダメですよ。もしも先方が「どのくらいの頻度でやってましたか?」って聞いてくれば、その時に真実を言えばいいです。
あるいは、罪のない程度にちょっと多めに「月2〜3回」って盛るのもありです。(私は「ちょっと気持ち多め」でいいと思います)
もちろん、嘘は絶対イヤだという人は事実を言っていいですよ。ただ、正直に「月1回」と言ってしまうと、相手にとっては正直「少なっ!」って感じですよね。
そんな場合に備えて、「前職での英文メールの頻度は月1回でしたが、スキルアップのために英文ライティングのオンライン講座を○ヶ月感受講しています」とか、弱い面をカバーできる材料も準備しておかないといけません。
ぶっちゃけ、先方が知りたいのは「この人にうちの仕事を任せられるのか」だけなので、「任せられる」と思われるために私は何を伝えないといけないのか?を真剣に考える必要があります。
周囲に翻訳の仕事をしたいとアピールする
友達や親戚などに、「翻訳の経験を積みたいんだけど、ボランティアでもいいから何かない?」って声をかけておきましょう。
翻訳の仕事を得るには、「それまでの実務経験」がすごく大事で、未経験者が最初の仕事をゲットするのがなかなか大変です。なので、ボランティアでもいいので翻訳の実務を経験して、それを応募書類や面接の時にアピールできると強いです。
ボランティアでやった場合も、アピールの際は「ボランティアで」って自分からバカ正直に言わなくていいですからね(笑)。聞かれたらそう答えればいいだけで、自分からあれこれさらけ出す必要はありません。
相手としては、仮にボランティアであっても、翻訳と名のつく何かの作業をしたことがある人と全くない人とでは、当然ながら翻訳をやったことがある人が安心なものなんです。
翻訳に必要ないことはしないと決める
そして、英語力がある程度のレベルに達して、もう後は仕事をゲットするだけ・・・という段階に来て、翻訳に最短ルートでたどり着きたい場合は、
・英会話レッスン
・瞬間英作文
・ディクテーション
・通訳トレーニング
・TOEIC対策
とか、翻訳に関係ない勉強はどんどん排除してください。
まあ、TOEIC対策については「800点以上ないと足切りされることが多い」という現状があるので、そのレベルまではTOEICに特化した勉強をすることも仕方ないかもしれません。
でも、800点や900点を越えてもTOEIC問題集で勉強をしている翻訳者志望の人をたくさん見かけますが、TOEICはもういいので、翻訳の勉強をしましょう!
TOEIC高得点のあなたが翻訳の仕事がゲットできない理由は、TOEICの点数ではありません。翻訳スキルが足りないからです。ちゃんと翻訳の勉強をやっていたら、何の対策をしなくてもTOEICの点数も上がります。心配いりません。
あと、「英検1級を取ってから」とかいう先延ばしも、マジでやめてください(笑)。
「英検1級の読解問題が解ける程度になる」「エッセー対策」ならまあいいとしても(ただし最短ルートからは外れます)、翻訳に何の役にも立たない2次のスピーチの練習とかやってたら、ものすごい遠回りです。
英検1級を持ってたからって、翻訳の仕事を探す時に有利にはなりません。
これについては、◆通訳翻訳に英検1級は有利?「もう少し勉強してから」は禁句にしようにも詳しく書いています。
また、英検1級は多くの受験者にとって単語がネックですが、英検1級の単語のマスターなんて翻訳には不要です。「いやいや、1級レベルの単語もたくさん翻訳で出てくる!」って反論はあるでしょうし、それは事実です。
私が何を言いたいかというと、英検1級レベルの単語だったら、「知っている」とは言っても定義を一つ覚えている程度で、それ以外の背景知識が何もないことが多いでしょう。そういう場合、どうせ翻訳の時に最適の定義を見つけるために辞書を引くことになるんです。
だったら、覚えてなくてもいいじゃないですか(笑)
「翻訳の仕事がしたい」と口では言いながら、いつまでも「勉強」が終わらない。これは、たくさんの人が陥っている罠です。「これも翻訳に関係あるかも」「これも役立つかも」って手を広げないように、本当に気をつけてください。
専門知識がないと翻訳はできないのか?
最後に、「専門分野がない自分に、翻訳はできるのだろうか?」と不安に思う人も少なくないと思います。
技術者など、もともと専門知識があった人が翻訳の仕事をするようになった場合もあれば、専門知識なしでその業界に入り、翻訳の実務経験を積みながら知識を身につけてきた翻訳者もいます。
私は完全に後者ですが、「英語が得意で翻訳の仕事がしたかったから、仕事をしながら何とか専門知識をつけた」という人の方が一般的に多いと思います。
産業翻訳の分野は、医薬、特許、金融、ITなどいろいろありますが、どうしてもこの分野というこだわりがあるのでなければ、今は専門知識の心配はしなくていいと思います。
というのは、「就職をした会社がたまたま○○分野の企業だったから(あるいは最初にもらった翻訳の仕事が○○分野だったから)、実際に翻訳をしながら専門知識を学んでいった」という感じで、自分の分野が自動的に決まることが多いものだからです(笑)。私もそうでした。
専門知識や得意分野と言えるものが今の所ないのなら、分野を絞らず、たまたま人材を募集していた企業、たまたま派遣会社に勧められた企業、自宅から通える企業という感じで、ご縁のあった会社の仕事から始めればいいと思います。
まとめ
現在TOEIC500点程度の初心者の場合、今はまだ英語の基礎をしっかり固めて翻訳ができるレベルの英語力を身につける段階です。
1.中学文法の復習
2.英検2級程度の単語
3.高校文法の復習
4.英文和訳練習(日英翻訳を目指すなら、英作文練習)
5.転職活動、トライアル応募
という順番を参考にして、勉強を積み重ねてください。
そして、今のうちに以下のような準備もしておきましょう。
1.翻訳セミナーや勉強会、懇親会で翻訳者の話を聞く
2.自分の経歴の棚卸し
3.周囲に翻訳の仕事をしたいとアピールする
収入のために別の仕事をしながら勉強時間を確保することはなかなか大変なことではありますが、ながら時間やスキマ時間を上手に活用して、頑張ってみてください。
私が翻訳者になったいきさつや、翻訳という仕事の実情については、以下に詳しく書いています。こちらも参考にしてください。