何度リスニングしても英語の音がスクリプト通りに聞き取れない理由



「何度聞いてもスクリプト通りに英語が聞こえません・・・
 どうやったら全部聞き取れるようになるんでしょうか?」

というご質問を、私はよくいただきます。

どうしても聞き取れない英語があって、スクリプトを確認してみると
「えっ、そこでそんな単語が入ってるの?」

そこで、スクリプトを見ながらもう一度英語を聞き直してみるけど
どうしてもそう言っているようには聞こえない・・・

いつか自分はこの状態を脱出できるんだろうか?
一体いつになったら、一語一句英語が聞き取れるようになるんだろうか?

もしかして、スクリプト通りに英語が聞こえないのは
私の耳に何か問題があるからなのかも・・・


そう不安に思っている方が、とても多いようです。


このページでは、
スクリプト通りに英語の音が聞こえないのはなぜなのか、
どうしたら英語の音がちゃんと聞き取れるようになるのかをお話しします。



スクリプト通りに英語の音が聞こえない理由


先日、以下のご質問メールをいただきました。

映画と海外ドラマは主に
リスニングのトレーニングを目的に行いたいと思っており、
現在、海外ドラマのディクテーションを行っています。

ですが、海外ドラマの音声はニュースと比べると非常に速く、
不明瞭に発音されるため、何度聞いても
スクリプト通りに聞こえないことが多いです。

この状態で同じ音声を何度も聞き続けることで、
スクリプト通りに聞き取れるようになるのでしょうか。



英語を聞いてスクリプトを確認したら、
どう聞いてもそう言っているようには聞こえない・・・という現象は、
特に海外ドラマやネイティブの会話で起こりやすいです。

その理由は、「音が変化している」からです。
(くだけた会話では特に変化しやすい)

実は、音が変化するというのは
なにも英語特有の現象ではなく、日本語でも起きます。

普段はそんなこと意識していないと思いますが、
ちょうどよい例があるので、お話ししようと思います。


ネイティブ日本人が日本語の音の変化に無意識に対応している例


先日、スラムダンクをHuluで日本語で見ていた夫に
「『ケンカガタイ』って何?」と聞かれました。

ケンカガタイ?
ケンカ難い?固い?

と意味が分からなかったので、そのシーンを見せてもらうと、
不良高校生たちがこう言っているシーンでした。

「喧嘩はガタイじゃねぇんだよ!」

でも、チンピラ言葉なので、あの「けだるい話し方」なんですよね。

けんかぁガタイじゃねぇんだよ」と聞こえます。

明らかに「は」じゃなく、「ぁ」とかろうじて聞こえるかどうか。
夫には「喧嘩ガタイ」と聞こえても全く不思議はありません。

夫に、
「ああ、『喧嘩はガタイじゃねぇんだよ』って言ってるよ」
と言うと、

「ええっ!『は』なんか全然聞こえない!」

とびっくりしていたのを見て、
ああ、これってちょうど私が言いたいことだよ!と気づきました。


そうなんです。

チンピラ高校生は 、明らかに
「喧嘩『は』ガタイじゃねぇんだよ」とは言ってないんです。

でも、日本語ネイティブの私には、ちゃんとその「は」が聞こえる。

というか、
物理的に聞こえてはいないのだけど、心の耳でその「は」が聞こえる
とでも言った方が正しいでしょうか。

日本語の文法とか、パターンとかの知識が体に染みついているから
そこに「は」がないとおかしいと分かるわけですね。

だから、私たちは自然に聞こえていない音も補うことができますよね。

それを、私の夫がそのシーンを何回も何回も巻き戻して
「は」が聞き取れるようになるまでトレーニングしたらどうなるでしょうか?

「喧嘩は」って聞き取れるようになると思いますか?


・・・ならないですよね。

だって、しつこいようですが
「喧嘩は」って言ってないんだから。



で、もう勘のいいあなたは
私が何を言いたいかお分かりですね。

これは、英語でも全く同じなんです。

全部スクリプト通りに聞こえなくていいんです。
というか、聞こえないのが当たり前です。

だって生きた英語では、ニュースでもない限り
誰もくっきりはっきり話してないですから。

あなたの耳が悪いから聞こえないんじゃないんです。



ネイティブでも聞き取れない音はたくさんある



ところで、ネイティブの人でも本当によく聞き間違える英語に
「can」「can’t」の違いがあります。

「’t」という発音は、話者が強調している場合を除いて
「トゥ」とはっきり聞こえることはほぼありません。
特に、文章がそこで終わらずに続く場合、ほとんど聞こえません。

だから、「can」「can’t」という単語そのものを聞き比べても
音声的にはほとんど違いがないことが多いのです。

どうやって違いを判断するかというと、それは音ではなく「状況」です。

「できる」と言っているのか「できない」と言っているのか、
話の流れ、対面なら話者の表情やジェスチャーなど
(顔をしかめる、首を縦に振る、肩をすくめる、など)
状況で判断でできることが多いですよね。

状況から明らかではない場合は、ネイティブでも
「”can” or “can’t”?」と発言者に質問します。
私の職場でもよくあった光景です。


あとは、「’ve」などもほぼ聞こえないです。
普通にネイティブスピードで話している英語では
「ヴ」とはっきり聞こえることはまずありません。

でも、「I seen him before.」と聞こえる場合
平叙文なら「I seen」は文法的にありえないので
「I’ve seen」だなと分かるわけです。

で、そこに「’ve」があると知った上で聞いてみると
かすかにそこで「ヴ」と口が動きかけている「気配」が感じられるとか
ちょっと息が止まっているような瞬間があるのがかすかに聞こえるとか
そんなもんなのです。

つまり、
文法の知識ありきで、そこに「’ve」が隠れているのだなと分かるのであって、
「ve」という、実際はほぼ聞こえない音が聞こえるようになるための
音声的なトレーニングとか特別な方法が必要なわけではないのです。



「一語一句聞き取れないといけない!」
「一語一句聞き取れるまでは自分は一人前ではない!」

と自分に厳しくするのは、今日でおしまいにしてください。

一語一句聞き取れる必要なんてないんです。
全てを一語一句聞き取ってる人なんていないんですから。


いわゆる英語のプロであっても、ネイティブであっても、
全てを100%聞き取っているなんてことはあり得ず、
推測と経験で補っているだけなんです。

「こういう文章の流れだと次はこうなるはずだ」
「文法的に正しくなるためにはここにこれが必要だ」

ということを一瞬で判断できているからこそ
英語が推測でも正しく聞き取れるんですね。

なので、聞き取れない音に対して過剰に執着しないようにしてください。

それよりも重要なのは、たくさんの英語に触れることで

・正しい英語(文法、構文などの知識)
・自然な英語(よく使われるフレーズ、熟語など)

の引き出しを増やしていくことによって
「推測」できる領域を広げていくことです。



英語リスニングでは、一語一句聞き取れる必要はない。必要なのは推測


「一語一句聞き取れないといけない!」
「一語一句聞き取れるまでは自分は一人前ではない!」

と自分に厳しくする必要なんてない、ということは分かりました。


じゃあ、推測する力ってどうやったら身につくんでしょうか?

この推測の力についてわかりやすくご説明するため、
私たちが日本語の聞き取れないところをどうやって推測しているか、
ある日の通訳の現場での出来事を例にお話しします。

私が通訳として出席した会議では、日本人の部長が発言をしたのですが、
テレビ会議だったので電波状況が悪く、音声が不明瞭だった上に
その部長は年配だし滑舌の悪い人なので、
何を言ってるか聞き取れない部分がかなりありました。

これが外国人の発言だったら
「ああ、どうしよう・・・聞き取れない・・・!
 私のリスニング力はまだまだだ・・・」
と焦って落ち込んでいたかもしれません。

でも、その時の私は落ち着いていました。

全部は聞き取れないけど、言いたいことは分かったからです。
英語への通訳も問題なくできました。



ちょっと想像してみてください。

たとえば、会議の話題が東京へのオリンピック誘致だったとして
(会社でそんなことは議題にのぼりませんでしたが、一例です)
その日本人部長が、こう言ったとします。

「今は震災や円高で日本がお金がなくて・・・(音声不明瞭)のに、
 オリンピックなんて・・・(音声不明瞭)」

この音声不明瞭のところ、想像してみてください。

さてこの部長は、オリンピック誘致に賛成なのでしょうか?
反対なのでしょうか?


・・・どう考えても反対ですよね?

「今は震災や円高で日本がお金がなくて大変な時なのに、
 オリンピックなんてやっている場合ではない!」

とかなんとか、そんな感じだと想像がついたと思います。
つまり、100%聞き取れなくても理解は十分成立するのです。


100%聞き取れていないのに
なぜ理解がきちんと成立するのでしょうか?

それは、推測と経験で補っているからです。

「推測と経験」というのは、

・文法の知識
・単語・熟語の知識
・構文の知識
・よく使われるフレーズ・会話パターンの知識
・その話題や状況についての知識(話の流れ、文化的背景など)
・話者についての知識(性格、ポジション、口癖など)

などによって成り立っています。


「オリンピックなんて・・・」

という言葉のあとに肯定的な言葉がくるのか否定的な言葉がくるのか、
普通の日本人だったら、感覚で分かります。

「~なんて」という言葉の後ろに来るのってどんな言葉ですか?

「ありえない!」
「もってのほかだ!」
「大反対だ!」

など、普通は否定的な言葉ですよね?

「オリンピックなんて絶対やるべきだ!」
「オリンピックなんて日本を元気にするために必要だ!」

とかいう日本語は、不自然です。

そうやって、日本語の文法や構文の知識を
私たちは知らず知らずのうちに頭の中でフル回転させて
聞こえないところを補って、きちんと理解しているんです。

私たちは、聞き取れた単語から、
文法や構文の知識をもとに周りの不明瞭な部分を補い、
また背景知識や状況、文脈から想像し、

そこから「ということは、こういうことを言ってるんだな」と
文全体を推測しているにすぎないんです。

それでいいんです。

だって、さっきの日本人部長の考えはだいたい推測ついたでしょう?
それで十分なんですよ。


「聞こえた音 = 理解」

これがほとんどの日本人が英語に対して
幻想を抱いている状態ですが、こうじゃないんです。

「聞こえた音 + 聞こえない部分の推測 = 理解」

なんです。

つまり、物理的に聞き取れるかどうかよりも
正しく推測できる構文力や理解力があるかどうかが重要なんですね。


さっき言った

・文法の知識
・単語・熟語の知識
・構文の知識
・よく使われるフレーズ・会話パターンの知識
・その話題や状況についての知識(話の流れ、文化的背景など)
・話者についての知識(性格、ポジション、口癖など)

こういったものが身に付いていけば、
おのずとリスニング力は上がります。

もちろん、全部は聞き取れない文章であっても、推測で補って
ディクテーションも正しくできるようになります。


「こういう文章の流れだと次はこうなるはずだ」
「文法的に正しくなるためにはここにこれが必要だ」

ということを一瞬で判断できているからこそ
英語が推測でも正しく聞き取れる。

なので、聞き取れない音に対して過剰に執着しないようにしてください。


それよりも重要なのは、これからたくさんの英語に触れることで

・正しい英語(文法、構文などの知識)
・自然な英語(よく使われるフレーズ、熟語など)

の引き出しを増やしていくことによって
「推測」できる領域を広げていくことです。

なので、TOEICも高得点になったけれど
ネイティブの日常的な会話の聞き取りがまだ難しい人ができることは、

・単語、熟語、よく使われるネイティブ表現の習得
・文法と構文の知識を固めること
・たくさんのインプットによる英語脳内データベースの構築

に加え、

聞き取れないところは数回聞いたら諦めてスクリプトを確認し
なぜ聞き取れなかったのか原因を探り、その弱点をつぶす

ということしかありません。


「聞こえない音をしつこく何度も何度もリピートして聞く」
という苦行をしている方がたくさんいますが、
10回聞いて聞こえない英語は100回聞いても聞こえませんので、
実は、その努力は無駄です。


それより、数回で諦めてスクリプトをすぐに確認して、
単語を知らないから聞き取れなかったのか、構文のせいなのか、
日本人には背景知識のないジョークだったからなのか、
それを分析して弱点を強化するほうがよっぽど効果があります。

なので、スクリプトのない英語を聞き続けても弱点がどこなのか確認しようがないので、
リスニングのトレーニングにはスクリプトがある教材を必ず取り入れてくださいね。

ただCNNのニュースや映画を普通に聞き流していても
大きなリスニング力アップは望めません。

英語のすべての音を「物理的に」聞き取れることを目指すのではなく(無理!)、
たくさんの英語をインプットして英語らしい表現感覚を養い、
聞き取れなかった部分を正しく推測する力をつけましょう。

スクリプトがあり、英語らしい表現感覚を養えるリスニング教材で
私のお勧めはこれです。

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というわけで、
「どうやっても聞き取れない」というお悩みの解決のお役にたったら幸いです。



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