2018年5月13日
英語のシャワーはなぜ危険?そのリスニング勉強法は効果ナシです
エバンス愛

いつか映画が字幕なしで見られるようになりたい!
そんな憧れを抱いて、毎日英語のシャワーをせっせと浴びている人は少なくありません。
英語のシャワーというのは、「英語環境」を作って、常に英語が聞こえている状態にすること。
家にいる時はテレビでCNNなどの海外ニュースを常に流しっぱなしにしたり、米軍のAFN放送をつけっぱなしにしたりするケースが多いようです。英語に少しでも多く触れるために、毎日洋画や海外ドラマを見ているという方もいます。
でも、残念なことに
「毎日こんなにたくさん英語を聞いているのに、全然聞き取れるようにならない・・・」
というのが、「英語のシャワー」を毎日せっせと実践しているほとんどの人の感想だと思います。
そうは言っても、「英語をシャワーを浴びるように聞き続けていると、ある日突然英語が聞き取れるようになったんです!」なんていう体験談、英語教材の宣伝とかでよく見るじゃないですか。
私も「『英語を聞くだけで』っていう教材、あるじゃないですか〜。ああいうのって、ほんとなんですか?」っていつも聞かれます。
お気持ちはとっても分かります。
英語をずっと流しっぱなしにしてるだけで、本当に英語が聞き取れるようになるなら、今までのつらい英語学習から解放されるんですから、これほどいいことはないですよね。
でも・・・
「全然分からないものを聞いていたら、ある日突然聞き取れるようになった」
という人は、少なくとも私の周りでは、一人もいません。
私自身も、
「分からないものをただ聞き流しているだけで、分かるようになった」
という経験は、一度もありません。
冷静に考えてみてください。
ただただ英語を流しっぱなしにしていたら英語ができるようになるのなら、学校の英語の授業でずっと英語を流しておけば良くないです?(笑)
そしたら生徒は全員英語ペラペラ、リスニング力もネイティブレベルですよ。ずっとCD流しておけばいいんだから、英語の先生なんていらないし。
「えー!!じゃあ、『英語はシャワーのようにたくさん聞けばいい』ってのは何だったのー!!」ガ━━(゚Д゚;)━━ン!
実は、私も「英語が常に聞こえる環境にして、たくさん聞いていれば聞き取れるようになる」そう勘違いしていた時期があったんです。
同じリスニング教材を聞いた、私と妹の英語力の変化
私には2歳年下の妹がいますが、英語が苦手です。でも、「英語ができるようになりたい」という思いは人並みに持っています。
私たちが20代前半だった頃、通勤で妹と車をシェアしていたことがありました。当時、英語からしばらく離れていた妹は、多分英検4級くらいのレベルだったと思います。
毎日1時間くらいの道のりを車中で一緒に過ごすことになるわけですが、私は「車の中は英語学習時間」と決めていたので、妹がいてもお構いなしに自分の英語教材を聞いていました。当時の私は英検準1級くらいのレベルです。
英語を勉強したいと思っていた英検4級レベルの妹も「じゃあ私も一緒に聞いて勉強しようっと!」という感じで、英検準1級レベルの私の教材を一緒に聞き始めました。(まあ、私が英語を聞いてたんでは他にすることありませんから・・・)
数ヵ月後・・・妹の英語力は、どうなったと思いますか?
変化なしです。
私が理解できるその教材も、彼女にとっては数ヶ月聞き続けてもただのお経でしかなく、かと言って、少なくとも中学生レベルの英語はマスターできたかと言えば、そんなことも全くありませんでした。
当時は、私もそのあたりを誤解していて「英語のシャワーを浴び続ければ、いつの日か分かるようになるはず!」と思っていました。そんなメッセージが巷にあふれていたからです。
だから、
などと適当なことを言ってしまい、今考えると、妹にはとても申し訳ないことをしたと思います。
「英語のシャワー」がリスニング力アップに効果がない場合
もちろん、この教材を聞き続けたことによる効果は、「私にとっては」大いにありました。
ちょうどこの頃、TOEICのリスニングで満点(トータル980点)を取ったので、私にとってのリスニング対策は、これで間違っていなかったと思います。
でも、全く同じ教材を全く同じ環境で聞いている妹には、効果がゼロだったんです。「本人のレベルに合った教材でなければ、いくら聞いても全く無意味」ということです。
自分のレベルに合ってない英語のシャワーを浴び続け、「毎日頑張って英語を聞き続けているのに、全然聞こえるようにならないなあ」と悩んでいる方がとても多い。
英語圏在住の読者さんから「在米5年で、毎日何時間も英語のテレビ番組を見ているのに、恥ずかしいことに、いまだにほとんど聞き取れないし、全然しゃべれないんです」といったメールもよくいただきますが、それは見ているTV番組の英語レベルがその方には高すぎるからです。
自分のレベルに合っていない英語のシャワーをいくら浴び続けても、効果はありません。リスニング学習の最大のポイントは、「自分のレベルに合ったものを聞く」ということに尽きます。
「英語のシャワー」がリスニング力アップに効果がある場合
英語をたくさん聞き流す「英語のシャワー」が効果があるのは、あなたが聞く素材が以下の条件を満たしたときだけです。
1.知らない単語がほとんど含まれない
2.スクリプトを見なくても9割以上理解できる
つまり、たくさんの英語を聞き流して効果があるのは「聞き流しても意味がちゃんと分かる」英語だけなんです。
たとえば、英語のシャワーの素材として人気の海外ニュースやドラマなどは、TOEIC800点程度以下の学習者にとっては、知らない単語ばかりのはずです。特に、ニュースには難しい政治用語、軍事用語が出てきますので難易度はかなり高いです。
また、ニュース英語のスピードについていけるほどのリスニング力も、残念ながらまだ備わっていないと思います。ということは、こういう素材は英語のシャワーの素材として不適切なんですね。
でも、たとえばTOEIC700点程度の方であれば、中学生レベル、あるいは高校初級レベルの素材であれば「英語のシャワー」としてたくさん聞き流す価値があります。
私自身がTOEIC700点~800点台の頃は、基礎英語(中学レベル)、ラジオ英会話(高校初級レベル)などをたくさん「ながら聞き」していました。
「いやいや、知らない単語もほとんどない簡単な英語を聞き流して、一体何の意味があるの?」とお思いになるかもしれませんが、簡単な英語をたくさん聞くことには、大きなメリットがあります。
私自身は、TOEIC700点~800点台の頃は基礎英語(中学レベル)、ラジオ英会話(高校初級レベル)などをたくさん「ながら聞き」していました。
ただし、私の場合は「一度聞いたら聞きっぱなし」ではなく、通勤時間や家事をしながら、同じものを何度も繰り返して聞きました。
「自分にとって簡単な英語」をたくさん聞くことで英語を英語の語順のまま理解する脳内システムが身につきましたし、ながら聞きしながらシャドーイングも並行することで英語の発音やイントネーションを身につけることもできました。
知っているけど使えない単語や熟語の使い方が身についたり、辞書に書いてある定義以上のニュアンスが分かったりしました。
「こういう場面では、こういう言い方をよくするんだな」ということも、たくさんの英語に触れることで、自然と覚えていきました。
英語が聞き取れるようになる正しい「英語のシャワー」の浴び方
英語をシャワーを浴びるようにたくさん聞くことそのものは、間違った勉強法ではありません。むしろ、どんどんやってください。
英語がある程度聞き取れるようになるまでには1000時間かかる、というのが英語業界でよく言われる目安です。
実際、私自身の経験からも、だいたい1000時間くらいごとに「あ、なんか前と比べて英語が聞き取りやすくなったかも」というブレイクスルー体験が来る感じがしています。
1000時間というのがどれくらいの時間かというと、今から1年後くらいにリスニング力をレベルアップしたいなと思ったら、毎日3時間くらい英語を聞かなければ、1年後に1000時間にはなりません。
英語ができるようになるまでの時間については、こちらの記事も参考にしてください。
1日3時間って、結構な英語のシャワーの量ですよね。
もちろん、毎日机で3時間も英語を聞き続けられる時間の余裕がある人はほとんどいないと思います。じゃあ1日3時間はどうやって捻出したらいいかというと、通勤、家事などの時間を利用した「ながら聞き」です。
ながら聞きについては、こちらの記事も参考にしてください。
知らない単語がほとんど(あるいは全く)ない、簡単な英語を毎日3時間を目指して聞いてください。正しく英語のシャワーをたくさん浴びてください。そうすれば、必ず1年後にはブレイクスルーが訪れますよ。
「英語のシャワー」以外にも、多くの人が陥っていると思われる、そして私も陥っていた、間違いリスニング学習はたくさんあります。あなたは、英語リスニング学習でこんな間違い犯していませんか??