イチローの英語力はどれくらい?スピーチで英語力分析&全文解説
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イチローの英語力はどれくらい?スピーチで英語力分析&全文解説

エバンス愛

※当ブログ記事には、広告が含まれます。

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今年、現役を45歳で引退したマリナーズのイチロー選手が、先月15日にセレモニーで英語で5分間のスピーチをしました。非常に感動的なスピーチでした。

 

 

イチロー選手は公の場で英語で話さないことで有名で、現役時代のインタビューなどでも必ず通訳を介していました。自分の意図が曲げられて伝わったり、誤解が生じることを避けるためだったと言われています。

そのため、「アメリカで長くプレーしているのに英語を使わないとは、アメリカへのリスペクトが足りない」という批判や、「実は、あんなに長くいるのにイチローは英語を話せないんじゃ?」という噂もあったりしました。

 

「イチローに直接英語で語りかけてほしい」という、全米のイチローファンの長年の悲願がかなったこのスピーチ。この記事では、イチロー選手の英語力を分析し、スピーチの全文解説をしてみたいと思います!

たくさん役に立つフレーズが出てきますので、ぜひ参考にしてみてくださいね。

 

イチロー選手の英語力はどれくらい?

Embed from Getty Images

 

まず、このスピーチですが、原稿が非常によくできています。というか、ノンネイティブが作ったにしては、できすぎているというのが正直なところです。おそらく、スピーチで伝えたいことを通訳またはバイリンガルのスタッフに相談して、ネイティブに書いてもらったものだと思います。

ですので、スピーチで使われている英語そのものだけを見て、イチロー選手の英語力を測ることは難しいです。

 

スピーチの最初にポロッと出てきたネイティブ表現

スピーチを始める前に、イチロー選手同僚に話しかけているシーンがあります。

Dee (Gordon), Yusei (Kikuchi), no crying tonight. No crying.

 

おそらく二人は泣き虫なんでしょう。実際、菊池雄星選手は、春に日本で行われたイチロー選手の引退試合で号泣していました。

だから「今日は泣くなよ!」と最初に釘を刺しているわけですが、この“No crying.”は、英語がそこそこレベルの日本人では出てこない発想の英語です。

 

「泣くなよ」と言いたいとき、普通の日本人がまず考えるのが”Don’t cry.“です。でもネイティブは、この「No ○○ing」という言い方を非常によく使います。

ネイティブの夫マイクに聞いたところ、「Don’t 〜よりNo 〜ingの方がよく使われるんじゃないかな」とのことです。

 

こんな感じで使います。

No touching.(触らないで)
No talking.(おしゃべり禁止)
No running in the hallway.(廊下を走ってはいけません)

イチロー選手は、こういうネイティブ感覚の英語を自然と使いこなせると想像することができます。

 

イチロー選手の発音はコテコテの米語、イントネーションは完璧

では、次にイチロー選手の発音です。緊張や原稿を読み上げるという難しさもあってか、最初の方は特に日本人なまりの発音に聞こえます。ですが、だんだんとスピーチが進んでいくと、コテコテのアメリカ英語の発音がそこかしこに出てきました。

日本人には難しいThank youの[th]の発音、championの[ǽ]の発音や[r]の発音も上手でした。

 

北米特有のtが落ちる発音も、「慣れてるな〜」という印象です。たとえば、”competitor(競争相手)”を「コンペリィラー」のように発音するのですが、そんな北米らしい発音がさらっと出てきてきていました。

なかでも、

Seattle(すぃーろぅ)

の発音は、本場ですね。この単語の発音が一番うまかった(笑)

 

あと、イントネーションやポーズの取り方は、素晴らしかったです。どこが強くどこが弱いか、どこがゆっくりでどこが速いか、その英語らしいいリズムは全編を通じてほぼ完璧でした。

「いやいや、英語が話せなくたって、英語を読み上げるだけだったら誤魔化せるんじゃないの?」って思うかもしれませんが、読み上げる英語を聞くだけで、その人が英語ができるのかどうなのか、わかります。

ここまできちんと英語らしいイントネーションとリズムで発音できているのは、イチローが英語を話せるから。

 

たとえば、英語を話せない俳優が、英語でセリフを言うシーンがありますよね。俳優なら、もちろんセリフの一つ一つを何度も猛練習して、発音指導も入っているはずですが、それでも発音やイントネーションがおかしい、うまく聞こえるように誤魔化しているだけということは山のようにあります。

イチロー選手も、このスピーチに向けてもちろん原稿を読む練習は何度かしたとは思いますが、俳優ほど猛練習したり発音指導をしてもらったりということは考えにくいです。そんなに暇ではないでしょう。なので、イチロー選手は、かなりの英語の使い手と考えていいと思います。

スピーチではなく、普通にネイティブとインタビューなどでやりとりしている英語を今度はぜひ聞いてみたいですね。

 

イチロー選手の5分間スピーチ全文和訳&解説

ネットで英文や和訳も出回っていますが、私が見た限り、どれも英語がちょっと間違っていました。私が実際に聞き取った英語と、私の和訳を掲載して、解説を入れたいと思います。

ビジネス英語に使える表現もたくさん出てきますので、しっかりチェックしてくださいね。

 

Thank you. I’m so nervous. Okay, let’s do it. Dee (Gordon), Yusei (Kikuchi), no crying tonight. No crying. This is a happy occasion.
ありがとう。とても緊張しています。よし、始めますか。Dee (Gordon)、雄星(菊池)、今夜は泣くなよ。いいな。今日はおめでたい日なんだから。

When I retired that night in Tokyo, I had an incomplete feeling because the great fans of Seattle could not be there.
私が東京で引退試合をした夜、何かが欠けているような気がしました。それは、シアトルの素晴らしいファンの皆さんがそこにいなかったからです。

Tonight I want to express my appreciation to you for your touching support over the years.
今日は、皆さんの長年にわたる心温まるご支援に感謝の意を述べたいと思います。

<解説>
このtouchingというのは日本語にしにくいのですが、とてもよく使われる単語です。感動的な、心温まる、涙がじーんと出てくるような、そんな意味です。(例)The movie touched me.(その映画を見て、私はじーんとなった)

あと、I want to express my appreciation to you for…という表現は、ビジネスのスピーチやプレゼンなどでもめちゃくちゃ使うので、覚えて使えるようになっておくといいと思います。私は通訳現場でこれまでこの英語を何百回言ったかわかりません。(笑)

 

When I came to Seattle in 2001, no position player had ever come from Japan before.
私が2001年にシアトルに来たとき、日本人野手は一人もいませんでした。

<解説>
position playerとは、投手に対して「野手」(1塁手、中堅手など)のことです。no position player had ever comeで、大過去(過去完了)。イチロー選手が2001年にシアトルに行った過去があり、そのさらに過去なので、大過去で表現します。

ーーー日本人野手いない(大過去)ーーー2001年(過去)ーーー>現在

 

The one you got was 27 years old, small, and skinny. And unknown. You had every reason not to accept me.
皆さんの元にやってきたのは、27歳の、小柄で痩せた、無名の選手でした。私が受け入れられなかったとしても当然でした。

<解説>
the one you gotというのは面白い表現ですね。「あなたたちが得たもの(選手)は」というのが直訳ですが、日本人はなかなか思いつかない発想の表現です。

have every reason (not) to…という表現は、ネイティブはよく使いますが、日本人にはちょっと訳しにくいですね。「僕を受け入れない理由はいくらでもあった」ということです。

・日本人野手は誰もメジャーリーグに来たことがない
・小柄でパワーもないイチローみたいなのが成功するわけない
・よくわからない無名の選手にお金を払いすぎじゃないか

など、いくらでも理由をつけて僕を歓迎しないこともできたということですね。

 

However, you welcomed me with open arms and you have never stopped, even when I left and came back.
でも皆さんは、心から私を歓迎してくれ、それは止むことはありませんでした。私がいったんマリナーズを去り、また戻ってきた時でさえ。

I was so grateful for the chance to return in 2018 and the reason is you fans. Thank you, Seattle.
2018年にシアトルに戻って来られたことを、本当に感謝しています。そして、私が戻ってきた理由は、ファンの皆さんです。ありがとう、シアトルの皆さん。

<解説>
I am grateful for…(〜に感謝している)という表現も、めちゃくちゃよく使います。ビジネスの現場でもよく使うので、thank you for以外のバリエーションとして使えるようにしておくといいでしょう。

the reason is you fans.の「you fans」に「ん?」となった人がいるかもしれませんが、これはyouとfanがイコール(同格)で、「あなたたち、つまりファンの皆さんです」ということです。

 

I also appreciate the fans across America who supported me in New York, Miami, and even in many places as a visiting player.
また、ニューヨーク、マイアミで、そして敵地で私に声援をくれた全米のファンの皆さんにも感謝します。

<解説>
I appreciate…(〜に感謝している)もビジネス英語で使える感謝の表現です。この英語も、私何千回言ったかわからない。

 

Baseball is truly a national pastime in America and I was so happy to play in front of the people who love and respect the game so much.
野球は、まさにアメリカの国民的娯楽であり、野球を心から愛し敬っている国民の前で野球ができたことを本当に幸せに思います。

It has been an honor to play baseball with and against some of the greatest competitors I have ever known. They inspired me to raise my game to a higher level.
私が人生で出会った中で最も偉大な選手たちと、チームメイトとして、また敵として野球ができたことを光栄に思います。彼らは、私にもっと野球が上手になりたいというモチベーションを与えてくれました。

<解説>
It has been an honor to…(〜を光栄に思う)という表現も、ビジネスでよく使います。「あなたと一緒にビジネスができたことを光栄に思います」と(社交辞令で)言う時なんかにとても便利です。これから一緒にビジネスをする相手に対しては、完了形は使えないので、It is a great honor to work with you.などと言えばOK。

to raise my game to a higher levelの「game」がちょっとわかりにくいですね。gameには「試合」という意味だけではなく、「技術」「狩りの獲物」など、いろんな意味があります。ここでは野球の「技術」という意味です。

 

Now, I have the pleasure of spending time with these young and talented players, who will bring the franchise a championship.
今、私は若く才能あるチームメイトと時間を共にすることを楽しんでいますが、彼らが将来、チームを優勝に導いてくれることでしょう。

<解説>
franchiseという意味が取りにくいですよね。日本語でフランチャイズと言えば、セブンイレブンやマクドナルドしか思いつきませんが、英語では「チーム」という意味があるんですね。(驚)

そして、championshipは「チャンピオンであること」、簡単に言うと優勝という意味。bring the franchise a championshipで「チームに優勝をもたらす」ということです。

 

Despite the language and culture gap, not to mention an age difference of 20 years, I enjoy being around them because I feel their passion for the game I love is genuine.
言葉と文化の違い、そして言うまでもなく20歳もの歳の差にもかかわらず、私はチームメイトと一緒にいることを楽しいと感じます。私が愛する野球への彼らの情熱は本物だと、私は感じているからです。

As I look back to my career, if there’s anything that gives me pride, it is that I overcame the daily challenges and had equal passion for each day, from the first one in 2001 to the last one in 2019.
現役生活を振り返って、誇れることがあるとすれば、それは2001年の最初の日から2019年の最後の日まで、日々の課題を克服したこと、そして毎日同じ情熱を持ち続けたことです。

<解説>
not to mention…で、「〜は言うまでもなく」という意味です。通常は、いくつか例を挙げて、一番強調したいものをnot to mentionの後に置きます。

発音を間違えやすい単語、career(キャリア)ですが、「リ」にアクセントがあります。

 

As we enter the final days of a long season, every player should remind himself,  “What does it mean to be a professional?”.
長いシーズンも終わりが近づいてきましたが、すべての選手は、プロとは何たるものかを思い出すべきです。

These last days are just as important as the first ones and all those in between. Every day you need to go about your business with the same passion.
シーズン最後の日々は、シーズン最初の日々、そしてシーズン半ばの日々と同じくらい重要なのです。毎日、皆さんは同じ情熱を持って仕事をする必要があります。

<解説>
go about businessで仕事をする、物事にとりかかるといった意味です。よく使う表現です。

確かに、シーズン最初は張り切って試合をしていても、シーズン終盤になって順位も確定してきて、マリナーズのように最下位となると、モチベーションが下がる選手もいるのかもしれません。

「毎日同じ情熱を持って現役生活を送ったことは胸を張って言える」というイチロー選手からの、「毎日は等しく重要だ。最後まで同じ情熱を持って野球をしよう」というアドバイスですね。

 

That is the greatest gift you can give to your performance and to the fans who come to enjoy this special game.
それこそが、あなたたち自身のパフォーマンスに対する、そしてこの特別な試合を観に来てくださったファンへの最高の贈り物です。

To the Seattle Mariners organization, I am forever grateful to you for giving me the chance to play the game I love in the city I have come to love.
シアトル・マリナーズの皆さん、私が大好きになったこの街で、私の愛する野球をするチャンスを与えてくださったことに、永遠に感謝します。

Thank you also to my family for your endless support. Now, let’s play baseball.
私の家族、ずっと支えてくれてありがとう。さあ、野球を始めましょう。

<解説>
再びgrateful to 人 for…が出てきましたね。「come to 〜」で〜するようになるといった意味で、in the city I have come to loveは、「私が大好きになったこの街で」という意味です。

“play the game I love in the city I have come to love”この英語がすごく感動的です。「the game I love」と「the city I have come to love」が対比されています。これが「the city I love」だったらそれほど感動しないし、むしろ白々しいのです。

野球は子どもの頃からずっと大好きだからthe game I loveだけど、the city(シアトル)はたまたまメジャーリーガーとして生活することになった街で、でも住んでいるうちに大好きになったという心の変化がthe city I have come to loveによく表れていると思います。

 

まとめ

以上、イチロー選手の英語力の分析と全文解説でした。

単語単位での日本語なまりはあるものの、英語らしいイントネーションとリズムをほぼ完璧にマスターしている様子を見ると、イチロー選手にはかなり高い英語力があると考えて間違いなさそうです。

 

もちろん、「18年アメリカに住んでいればもっと発音も上手でもいいはず」と思う人もいるかもしれません。でも、「発音が良い=アメリカ人のような発音でしゃべる」ということなら、私は必ずしもアメリカ英語に寄せることが良いとは思っていません。

実際に、いろんなノンネイティブが英語を使う英語圏の国では、お国訛りが個性でありセクシーと捉えられているのです。相手が理解できないほどの下手な発音ではもちろんダメですが、そうでなければ、イチロー選手の発音は十分以上と言えると思います。

 

上でも書きましたが、非常によくできているスピーチなので、ご自身でも発音の練習や英語の勉強の教材として使ってみてもいいと思います。以上、お役に立ったら幸いです!

 

追記(2022年9月1日)

2022年8月に開催された、シアトル・マリナーズ殿堂入りスピーチも新たに記事にしました!こちらも合わせてどうぞ。

イチローのマリナーズ殿堂入り英語スピーチを全文翻訳&解説してみた!

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Ai Evansエバンス愛

独学で英語を学び、国際機関で通訳者を8年経験したのち、独立。本物の英語力を身につけ、大和魂を海外に発信できる国際人を育てることが目標です。
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