2018年7月31日
LとRの違いは大事じゃない!発音に重要なのは「リズム」
エバンス愛
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「仕事で英語ネイティブに自分の英語が通じなかった」
「英会話の先生に、発音を改善する必要があると言われた」
そんなきっかけで、英語の発音をもっと良くしたいと思っている人は多いと思います。
でも、発音ってどうやって直したらいいのか、よく分からないですよね?
このページでは、英語の発音を改善する方法と、「実は発音ってそんなに心配しなくて大丈夫ですよ!」という話をしたいと思います。
この記事を読み終わる頃には、発音に対して感じていたプレッシャーとか重い気持ちが軽くなっているはずです。
文字ひとつひとつの細かい発音は、大事じゃない
はい。いきなりなんですが、多くの人が悩んでいるのが「LとRの違い」とか「BとVの違い」とかいう、アルファベットひとつひとつの正しい発音だと思うんです。
でも、こういうのは、はっきり言って英会話には大事ではありません!
たとえば、“rice(米)”と“lice(シラミ)”って、カタカナで書くとどっちも「ライス」ですが、RとLで発音が違いますよね。
私は中学校のとき、英語の授業で「いいか、riceのつもりでliceって言ったら『シラミ』になるからな!だからちゃんと発音を覚えろよ!」という先生の言葉を聞いて、かなーりショックを受けた覚えがあります。
(その割に、発音はそんなに良くない先生だったような・・・w)
でも、よく考えてみてください。
「rice」と「lice」を相手が聞き間違えるような事態なんて、起こると思いますか? ほぼないです。なぜかというと、英語を話すときは、必ず「コンテキスト(背景、文脈)」とセットだからです。
レストランで注文するときに「ライス、プリーズ」と言えば、あなたのRの発音がどれほど悪かろうと、絶対に米が出てきます。
食べ物に関するコンテキストの中での会話だったら、あなたが言いたいのは米だと必ず分かってもらえます。
逆に、私が好きな「Outlander(アウトランダー)」という海外ドラマの「ボツになったシーン」をYoutubeで見ていて、ちょうど出てきたのがこれですよ。(字幕がなぜかロシア語なのは気にしないでください)
あまり清潔そうじゃない男性の髪を触っている場面なので、ここではシラミだと分かりますよね。セリフは、多分こうです。
It’s nothing funny about lice. (They) carry disease. Their bites can become inflamed and infected.
(シラミは笑い事じゃないわ。病気を媒介するし、噛まれたところが炎症を起こしてバイ菌が入るの)
※余談ですが、良かったらこの動画の最初から聞いてみてください!女性以外はスコットランド訛りの強い英語で、私は半分も分かりません。というか、英語に聞こえない・・・
自分がどういう発音をしているかSiriで確認するという方法がありますが、さっきちょっと私も試してみました。
ただし、 “rice” と “lice” と単語単体で言っても仕方がないので、“I want to eat lice.(訳:シラミが食べたい)” とSiriに話しかけてみました。
すると・・・じゃーん!!
“I want to eat rice” とSiriが勝手に解釈してくれたんです。私としては、あくまでもriceとは言ってなくて、日本語のらりるれろの「ら」のイメージで「ライス」と発音しています。
何度も試しましたが、何回やっても、近所のお米が食べられるレストランをサジェストしてくれました。
で、もう一つ試してみました。次は、“I want to have lice.” です。意味はどっちも「シラミが食べたい」ですが、今回は動詞がeatの代わりにhaveです。
すると、こうなりました。(お食事中の人ごめんなさい)
「ライス」の発音は、さっきと同じく日本語の「ら」で発音しています。動詞がeatかhaveなだけで、あとは全く一緒。
(なお、louseというのは、liceの単数形。mouse(単数)ー mice(複数)と同じ単複変化です)
これが何を意味するのかというと、「eatなんだから、シラミじゃないっしょ。さすがに」ってSiriが空気を読んでくれてるってことです。発音より文脈を優先して解釈してくれたんです。
一方、haveはeatより間接的なので、食べ物の話かどうかが曖昧なんですね。だから、より発音に忠実な解釈になっています。(※ちなみに、「○○が食べたい」って普通に英語で言うときは、「I want to eat ○○」より「I want to have ○○」とhaveを使うのがスマートですよ)
機械ですら文脈で理解してくれるんだから、相手が生身の人間で、しかもその会話のシチュエーションがあるわけだから、こういう発音の細かい違いってそんなに大事じゃないって分かりますよね。
私たちは、英語を単語だけ単体で何の文脈もなく話すことはありません。必ずコンテキスト(場面、背景)とセットです。
・beer(ビール)
・veer(方向転換)
を両方「びあ」と発音したとしても、
・moss(苔)
・moth(蛾)
を両方「もす」と発音したとしても、
・she(彼女)
・sea(海)
を両方「しー」と発音したとしても、
・fun(楽しいこと)
・fan(扇風機)
を両方「ふぁん」と発音したとしても、
状況でどっちか分かるのです。
私自身、たとえば通訳の仕事のときに「she(しー)」と「see(すぃー)」を区別できていない時がおそらくあったと思います。私の通訳の先輩の一人は、通訳技術は高いけど「V」や「TH」の発音などは得意ではない人でした。
でも、私にしろ先輩にしろ、そういう区別ができてないせいで苦情や会議の進行への支障が出たことは一度もないです。
アルファベットのひとつひとつを正しく発音できれば、それに越したことはありません。それは間違いないです。
でも、あなたが「発音を良くする訓練」だと思ってやっているRとLの違いとか、VとBの違いとか、THの発音とかいうのは、優先度がかなり低いのです。
もちろん、飲み物の「ビール」はカタカナ英語なので、「ビア」と発音しないと通じません。他にも「エネルギー(英語はエナジー)」とか、そもそも通じないカタカナ英語と正しい英語の区別は必要です。
でも、「ビア」なのか「ヴィア」なのか(下唇を噛むのか噛まないのか)とかいう違いは、神経質にならなくても文脈で通じるから大丈夫ですよ!ってことです。
通じる発音の秘密は「リズム」
じゃあ、優先度が高い発音の訓練って何なんでしょう?
それは、リズムです。強弱、イントネーションと言ってもいいです。これが、本当に大事。そして、ここがしっかりしていれば、一つひとつのアルファベットが少々ジャパニーズな発音だろうと、英語は通じます。
つまり、アルファベットひとつひとつの発音ではなく、文単位でどこが強く発音されてどこが弱くてどこがクシャッと縮まるのか、それが大事なんです。
ドリフのコントで、志村けんさん扮する英語の先生が、英語ネイティブの外国人の生徒に英語を教えるというものがありました。
This is my father.
という英文を、志村けんさんがジャパニーズイングリッシュの英語で発音していました。
「ぢす・いず・まい・ふぁー・ざー!」って。
こうやって、すべての音節を同じリズムで読んでしまうのが日本人なんです。まあ、日本語自体がそういう言語なので、仕方ないんですけどね。
でも、英語らしいリズムでは、This is my father. と、強いところと弱いところがはっきりしていますよね。isはthisの後ろにくっついて弱く短いし、myも弱いです。その代り、fatherの「ふぁー」が強調されています。
文ではありませんが、たとえば、英語ネイティブが日本人の名前を発音すると、たとえば田中さんだったら、絶対「タナーカ」って言うじゃないですか。
山本さんは「ヤマモート」。「たなか」「やまもと」って同じリズムで言えないのが英語ネイティブなんです。強くゆっくりなところと弱く小さいところを作らないと、発音できないんです。
全部同じペースで淡々と発音する日本語と違って、英語は強くゆっくりになったり弱く縮まったりします。これがものすごく大事。それがしっかり抑えられていれば、fatherの「th」を歯の間に舌をちゃんと挟んで言ってなくても、状況で通じます。
「th」の正しい発音は必要ないとは言っていません。ただ、英語を話す上で一番大事なのはそこじゃないし、「th」の正しい発音ができてなくても文脈で通じる、というのが私の言いたいことです。
英語らしいリズムはどうやって身につける?
じゃあ、英語らしいリズムってどうやって身につくんでしょう?
黙って英語を聞いているだけでは、発音は上手になりません。声を出して練習しないとダメです。
でも、声を出していても、”father” “father” って単語だけをひたすら発音したり、”th” “th” って部分的に発音していても、英語らしいリズムは身につきません。文章まるごと発音する練習をしないと、リズムは身につかないんです。
そこで、シャドーイングです。このブログをいつも読んでくださっている方にはおなじみですが、シャドーイングが何か、どうやってやるのかはこちらに書いています。
なお、英語の初心者の人や、英語学習のブランクが長い人は、シャドーイングが難しいと思います。その場合は、音読から始めてOKです。
でもその場合、必ず、正しい発音を何度も聞いて確認して、そのリズムをできるだけまるごと真似するように音読してくださいね。間違っても、ひたすら「ぢす・いず・まい・ふぁー・ざー!」って自己流の間違ったリズムで音読しないように。
シャドーイングと音読については、こちらも読んでみてください。
で、音読にある程度慣れた人はぜひシャドーイングに挑戦して欲しいです。
音読だと、「ぢす・いず・まい・ふぁー・ざー!」みたいに、どうしても自分流の発音に傾きがちです。(まあ、あそこまでのジャパニーズ英語は珍しいと思うけど)
でも、シャドーイングだと、聞こえた音を真似することで精一杯なので、結果として、「This is my father.」聞こえたとおりに発音し、聞こえたとおりにイントネーション(リズム)をつけることができるからです。
これを繰り返すことで、英語らしいリズムが勝手に身につきます。
そして、英語のリズムを身につけるのに、シャドーイングよりさらに良いのがオーバーラッピングです。
シャドーイングは、英語より一歩遅れて発音しますが、オーバーラッピングは英語に自分の声をぴったり重ねて発音します。
ぴったり重ねることで、お手本の英語の抑揚と比べて自分の英語が平坦なことが実感としてよく分かるはず。
オーバーラッピングについては、こちらの記事も良かったらどうぞ。
まとめ
というわけで、相手に通じやすいネイティブらしい発音を身につけるには、アルファベットひとつひとつの発音よりも文全体のイントネーションとリズムが大事ですよ!という話でした。
ネイティブの発音が忠実に再現できるようになれば、リスニング力も向上するなど、良いことももちろんあります。でも、今回は、あえて発音を過剰に気にしないようにしよう!というメッセージを貫きました。
相手に全く通じない発音でなければ、少々の訛りくらいは個性だと考え、堂々と話しましょう。
英語ネイティブにとっては、訛りは魅力的に見えることもあります。むしろ、完璧に発音しようとするあまり、自信がなくなって小声でボソボソ発音してしまったりする方が問題ですから。
というわけで、発音に自信がない人のお役に立てましたら幸いです!