自然な英語にこだわっていた駆け出し通訳時代、先輩にしごかれて泣いた過去



突然ですが、私には「日本からなくなればいいのに!」と思っているものがあります。

それは・・・

『日本人がよく間違える英語』とか
『ネイティブに笑われるこんな英語』とか

「そんな英語はネイティブは使いませんよ」
「意味は通じるけど英語として不自然なのでダメですよ」

という、「笑われたくない」「バカにされたくない」という
ネガティブな感情に訴えるタイトルのネイティブ表現の解説本です。


でも、かくいう私も実は、以前はそういう系統の本を読み漁っていました。

だって、ネイティブに笑われたくないですもん。
だって、不自然な英語なんて話したくないですもん。

そうですよね?

だから、そういう本を買ったり、図書館で借りてきたりして
た~っくさん読みました。

「ほうほう!この表現、いかにも言いそうだけど
 これってネイティブが聞いたら滑稽なのね~」
「そうか・・・文法的には正しいけど自然な英語はこっちなんだ~」

って、勉強してました。


で、私はどうなったか、というと。


・・・どうなったと思います?

ネイティブに笑われることのない
自然な英語が話せるようになったと思いますか?



答えは・・・

私は間違えるのが怖すぎて、
不自然な英語を話すのが恥ずかしすぎて、

全く英語を話せない人になってしまいました。


だって、何か英語で言おうとするたび

「えっと・・・これってもしかしてネイティブには変に聞こえるかな?」
「間違ったらどうしよう・・・笑われたらどうしよう・・・」
「あ、あの本でこの表現は不自然って書いてあったかも!」

そんなことばかり頭に浮かぶんです。

唯一、夫と英語で話すときだけは、変なこと言っても別に恥ずかしくもないので
通じる程度に適当にしゃべっていましたけど、
夫以外のネイティブと話すのは、本当に苦痛でした。


そんな状況だったのに、いろいろな偶然と幸運(と言って良いのか)が重なって
経験も実力も全くないのに、通訳として採用されました。

でも、やっぱり間違えるのが怖くて、恥ずかしくて、
私は、日本人の発言を英語に通訳することが本当に全くできませんでした。

当時の英会話レベルは何とか英検1級に合格した程度ですが、
むしろ、通訳という立場になったために、余計に間違えるのが怖くなってしまったんです。

日本語の発言を聞いても、一つの言葉にこだわってしまって、一瞬で英語にできない。

「~の」という日本語に対して
「ここでは・・・ofかな?う~ん、forかな?」
とか考えてしまって、結局何も言えない。

何を言おうとしても

「これって本当に間違ってないかな・・・」
「通じるとは思うけど、不自然だから変に思われないかな・・・」

って、そればっかりが心配で、肝心の英語が全く口から出てこない。

だから、通訳の会議に出ても「うっ・・・」とすぐに言葉に詰まってしまって
見かねた先輩が代わりに通訳するという毎日でした。


そして、自分が通訳として会議に出た議事録の翻訳を
担当させられることが多かった私は、
自分の下手すぎる通訳の英語が収録された録音音声を聞いて
本当に本当に、病気になるほど毎回へこんでいました。

だって、日本語で自分が話している声だって聞くの恥ずかしいですよね。

それが、日本語どころか下手っくそな英語なんですよ・・・

それも、友達との会話とか、英会話レッスンとかなら別にいいのですが、
会社のお偉いさんがずらっと出席している役員会の会議とかなんですよ・・・

しかも、私の下手くそな英語がマイクで会場中に響き渡るんですよ・・・


もう、あの頃は毎日がつらくてつらくて、自分が英語を思い通りに話せないことが悔しくて、
全く役立たずな自分が恥ずかしくて、家に帰ってわんわん泣いていました。


私が通訳としてあまりに使い物にならなかったので、
最初の1年くらいは、仕事が忙しくない時に女性の先輩が通訳の特訓をしてくださいました。

日本語→英語の訓練なのですが、「これって英語で何て言ったらいいの?」と
言葉に詰まって何も言えなくなるたび、何回も、何十回も、先輩に言われました。

先輩:「はい!分からなくても、とにかく何か言う!!
 黙ってたら出席者もイライラするでしょ?」

えいみ:「でも、ここは○○って言ったらおかしいですよね・・・?
 何ていう英語で言ったらいいですか?」


先輩:「通訳っていうのはとにかく時間がないの。
 自然な英語が思いつかないときは、もうそれで諦める!
 その瞬間に言えるベストの英語でいいから」

えいみ:「・・こ、この文章は、何を主語にして
 文章を始めたらいいでしょうか・・・」


先輩:「何を主語にするかは一瞬で決める!迷わない!
 主語が決まったら動詞も決まる!
 動詞が決まったら目的語も決まる!」

えいみ:「はっはい!えっと・・・
 (適当な主語を置いて話し始める)
 あっ、えっと、やっぱり違う主語で言い直します。
 えっと・・・」


先輩:「一回英語を言い始めたら
 とにかく最後まで言い終えなさい!
 途中で言い直しはしない!時間ロスするから。
 英語なんて、後ろにいくらでも修飾つけられるんだから」

えいみ:「すっすみません・・・(涙)」


こんな感じで、しごかれたわけです。


で、読んでもらって分かると思いますが、
このトレーニングで「自然な英語で」とかいう意識は、皆無なんですよ。

先輩にも、耳にたこができるほど言われました。

「自然な英語とか気にするのは、あ・と!!!」


何を主語にするかは0.数秒で決めないといけないので
何が自然・不自然なんてこと、構っている余裕は全くないんです。

とにかく、一瞬で主語を決める。

主語が決まれば、その人(物)が何をした、と続けるので
動詞を何にするかも決まります。

そうすると、目的語も決まります。

だから、主語を決めた後はもう雪崩のように
動詞、目的語、そのほかの情報を
to不定詞とか関係代名詞を使って次々と付け足していく。

変な英語をしゃべって恥ずかしいとか、
間違ったらどうしようとか、
そういうプライドをかなぐり捨てる以外に、先輩のしごきと
通訳の現場に耐える方法が私にはありませんでした。


そして今、曲がりなりにも私が「Do you speak English?」と聞かれても
小さい声で「A little」ではなく、「Yes, I do.」と
堂々と言えるようになった道のりを思い返して何が一番大変だったかというと・・・

「恥を捨てること」
「『自然な英語』を捨てること」

です。

そして、ここに一番大きなブレイクスルーがありました。


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