2018年7月16日
独学でも通訳になれる?私が8年続けた英会話上達トレーニング法
エバンス愛
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通訳って独学でもなれるんですか?
通訳になるためには、どんなトレーニングが必要ですか?
という質問をよく受けます。
私自身、通訳の仕事をする前は、通訳の知り合いもいないし、どういうトレーニングをしたら通訳になれるのかなんてことも全く知らないまま、いろんな幸運があってたまたま採用されることができました。通訳学校には通ってないので、一応独学で通訳になれたことになります。
でも、英会話があまり得意ではなかった私は、特に日本語から英語への通訳でめちゃくちゃ苦労しました。あまりに仕事ができず、家に帰って何度泣いたかわかりません・・・
このページでは、通訳の仕事をはじめる前の私が「こういう通訳トレーニング法があるよ」と聞いておけば全然違ったのにな〜と思うことをまとめました!いつか通訳をやってみたいと思う人の参考になれば幸いです。
コンテンツ
実は通訳もみんなやってる瞬間英作文(上級編)
瞬間英作文は、日本語を見て瞬間的に英語に変換していくというトレーニング法です。実は、このトレーニングは通訳者もみんなやっている練習法です。基本的なやり方については、こちらをご覧ください。
上の記事では、瞬間英作文をまだやったことがない人や、英語の読み書きはそこそこできるけどほとんど話せないという人のために、瞬間英作文用に作られた教材を使う方法を紹介しています。
瞬間英作文用に作られた教材とは、言い換えると「英語にしやすい日本語」です。たとえば、こんな感じ。
1.私はその知らせを聞いて、とても嬉しかった。
2.朝早く起きることは健康にいい。
3.彼はなぜ昨日学校に来なかったのですか?
これらはどれも、主語がはっきりしています。文章も短いし、どういう文型を使えばいいのか、どの文法を使えばいいのか、分かりやすいです。スムーズに英語が出てくるかはともかく、典型的な「英作文用」の文章ですね。
でも、ご存知のように、世の中の日本語はこんな分かりやすい文章ばかりではありません。日本語では主語を言わないことが多いので、まず「主語は何だろう?」と困ります。
また、英作文用の文章と違って、「この文章はこの文法項目を使うんですよ〜」という分かりやすい感じではないので、自分でどういう構文を使って表現するかをとっさに判断しないといけません。
たとえば、さっきネットで見つけたこんな文。
不祥事によって会社がなくなる。なくならないまでも、業績不振でリストラの対象となってしまう。定年まで安泰だと思っていた人生が、突然崖っぷちに追い込まれることが簡単に起こる世の中になってしまった。
最初の文はいいとして、「なくならないまでも、業績不振でリストラの対象となってしまう。」この文章に主語はありません。
こういう日本語、読むだけならサラッとスルーできるんですが、通訳や翻訳をしようと思うと主語が何か判断しないといけないんですよね。
この場合、「なくならない(までも)」の主語は?「会社」ですね。「リストラの対象となってしまう」の主語は、「労働者(workers)」あるいは「私たち(we)」「不特定の人(you)」などです。これらを自分で瞬間的に補って英語にしないといけないわけですね。
それに、ビジネス文書には「まだ続くんかい!」という長々とした文がよく出てきます。書かれた文ならともかく、話し言葉はさらにひどいです。主語と述語が支離滅裂な人もいれば、話だけ無駄に長くて結論が分からない人もいます。
そういう日本語を英語にさらっと直せるスキルを身につけることが、通訳として仕事をするにはすごく大事なんです。
じゃあどうやってそういうスキルを身につけるかというと、特に使うべき教材などはなく、逆に、何でも教材になり得ます。
新聞記事。
会社の資料。
パンフレット。
自分の目的に応じて、好きな題材でトレーニングをしてみてください。私の通訳時代の先輩は、毎朝新聞を読みながらそれを片っ端から通訳している(瞬間英作文している)と言っていました。
私も、会社案内のパンフレットを家に持って帰って毎日瞬間英作文するのに使っていました。
通訳レベルの瞬間英作文の練習では、一語一句厳密に訳すのではなく、情報をイメージ化して訳すのが通訳には本当に大事です。
通訳の場合、発言された言葉はすぐに空中に消えてしまいます。一語一句メモを取れるはずもありません。聞いた内容のイメージ(映像)を思い浮かべて訳さないと無理です。
私はこれに気づくのにかなり時間がかかってしまって苦労したんですが、「イメージ化して訳す」これは覚えておいてくださいね。こちらのページが参考になると思います。
高校生用・大学入試用の英作文問題集で瞬間英作文
新聞や資料、上記のようなネットの文章は、最初は難しいかもしれません。大学入試用の英作文は適度に主語がわかりにくかったり文章が長かったりするので、通訳トレーニングとしての瞬間英作文のスタートにはいいと思います。
例えば、「大学入試 英作文」とネットで検索してひっぱってきた、こんな文章。
文明生活には科学者だけでなく、科学を応用できる人も必要だ。
科学知識を実際に用いて、日常の必要を満たすことが大切だからだ。
大学受験生なら、この文章をこねくり回して丁寧に英作文を作るはず。
でも、瞬間英作文の上級者は、こんな文章を見た瞬間に英語を作っていきます。もちろん書いてはいけません。その場で口に出します。
一語一句情報を漏らさず英語に反映していくのが受験の英作文ですが、瞬間英作文の場合、模範解答通りでなくてもいいです。たとえば、上記の「科学知識を実際に用いて」の「実際に」が抜ける程度の違いは、ここでは「実際に」がなくても意味はほぼ変わりませんから、訳出しなくても全く問題ないです。
高校生向けの英作文に特化した本って実はそんなにないのですが、安価でお勧めのものをご紹介しておきます。
仕事で使う資料や自作フレーズ集で瞬間英作文
私は、通訳として出席する会議の資料やスライドなどを使って、日本語を読んでそれを即座に英語に直すという訓練を毎日していました。
その資料を出席者が読み上げることもありますし、会議で使われる単語も資料に出てくるものが多いので、効果的な準備になりました。
逆に、会議資料を見て「この表現って英語でなんて言うんだろう?」という疑問が一つでも残っているようではダメです。少なくとも資料にあることは何でもスラスラ英語で言える状態にしておくために、資料を瞬間英作文するんです。
また、私は会議でよく使う表現を下のようにエクセルシートにまとめて瞬間英作文に使っていました。この記事のオリジナル執筆時点(2009年)で私が瞬間英作文していた表現はこれです。
まあ、見ていただければ分かりますが、英語のレベルは全然高くありません。
せめてこういう基本表現は、何も考えなくても瞬間的に出るととても楽なので、通訳の仕事を始めたばかりの頃はよく会議で出席者が言っている言葉をこうやって集めて瞬間英作文をしていました。
中学・高校レベルの瞬間英作文が一般的な万人向けのものだったのに対し、このエクセルシートのような瞬間英作文は、私自身の目的に応じたオリジナルです。
あなたの仕事で具体的にどういう場面で英語を使うかというのがはっきりしている場合は、そのシーンでよく使う文章を作って瞬間英作文をしたらいいと思います。
それぞれが、自分の目的に合わせてオリジナル教材を作るということです。
語彙を覚えながら瞬間英作文
さて、瞬間英作文をガンガンやってスピーキング力を高めつつ、それだけではもったいないと感じる私の横着アイデアとして、「瞬間英作文と他のスキルアップを組み合わせる」ということを提案したいと思います。
例えば、あなたが語彙力アップに取り組んでいるとします。おそらく語彙用の参考書などを使っていると思いますが、それぞれの単語について、その語彙を含む例文が入っていますよね。
その例文の日本語だけを読んで、英語に瞬間英作文するのです。
英語部分を隠して、日本語を見ながら(難しいですが)なんとかかんとか瞬間英作文してみると、単語も覚えられる上、通訳トレーニングもできて一石二鳥です!
英語学習は、こんな感じで「単語だけ」「英会話だけ」という勉強のやり方をするのではなく、「単語を覚えながら英会話力も伸ばす」とやり方を工夫するといいです。労力は半分、効果は1.5倍になります。
日本文化を学びながら瞬間英作文
通訳ガイドを目指している人に私はいつも勧めているのですが、日本文化や歴史の説明が日英対訳で書いてある本で瞬間英作文をするのはものすごくいいトレーニングになります。
こういう本って、たださらーっと読んでも、その時は「ふーん、そうなのか」と分かったつもりになっていても、いざその知識を英語で話そうと思っても悲しいくらい言えないものです。これが、瞬間英作文をやっておくと大違いなんです。
やり方はいたって簡単で、英文が書いてある方を隠して、日本語を見て瞬間的に英語を口に出していきます。そして、一文ずつでも一段落ずつでもいいので模範の英文を見て、使われている単語やフレーズを確認します。
この時、間違っても「丸暗記」はしようとしないでください。丸暗記だと応用ができなくなってしまいますから。覚えていいのは単語、熟語までです。(覚えようという意図はなかったけど何度もくり返していたら覚えてしまった、という場合は大丈夫です)
暗記ではなく「その場で英語を組み立てて口に出す」というトレーニングを繰り返すことで、「自分の言葉で何でもその場で言える」という状態を作れます。そうすれば、お客様にどんな質問をされるか分からない!というプレッシャーを克服できます。
通訳ガイドを目指している人はこういう本を何冊かはすでに持っている人が多いと思いますが、それを使ってください。以下は私のお勧め本です。
通訳トレーニング法としての瞬間英作文・まとめ
通訳の場合、会議の資料を開始数分前に渡され、ほとんど初見でその資料にそった会議の通訳などをしなければならないことも多いです。
だから、通訳であれば、瞬間英作文のスキルは必須。
「この人の言いたいことは何だろう?」と、発話の趣旨を瞬間的に捉えてそれを英語に変換していくという過程は、日本語を読むのであろうと聞くのであろうとそんなに変わりません。
通訳を目指す方は、やっておいて絶対に損はないトレーニングです。というか、必ずやるべきです。一緒に頑張りましょう!