2017年2月8日
「映画を字幕なしで理解」したい人にお勧め!江戸時代の日本を描いたハリウッド映画『沈黙 -サイレンス-』
エバンス愛

夫と一緒に遠藤周作原作、マーティン・スコセッシ監督の『沈黙 -サイレンス-』を見てきました。

キリスト教弾圧下の江戸時代に日本に渡ってきたポルトガル人宣教師が、信仰を貫くか、棄教して信者の命を救うかという究極の選択を迫られ苦悩するストーリー。
信仰とは何か、宗教とは何か、「人の役に立つ」とは一体何なのか、自分の使命と信じる道を行くことが他人を不幸にするなら何をするのが正しいのか、すごく考えさせられました。
途中から涙が止まらず・・・夫も私より泣いていました。
でも一方で、宣教師たちは心から「日本にキリスト教の教えを広めることで、民を救いたい」という思いで活動していたかもしれませんが、そもそも何のためにわざわざ遠い日本に宣教師が送られたかという歴史的な背景を考えれば、それは植民地支配のためだったとも言えるわけです。
現に、他のアジアの国々は、ことごとく西洋諸国の植民地となっていました。日本を植民地にするための情報収集が必要だったんですね。なので、そういう見方でこの映画を見ると、なかなか複雑ですが・・・
まあ、ストーリーは置いておいて、英語に携わる身としては、あの映画の英語にぜひ注目して見ていただきたいな、と。
舞台は江戸時代の長崎で、その辺の貧しい村人がみんな英語ペラペラという冷静に考えたらツッコミどころしかないのですが(笑)、宣教師の英語のセリフもゆっくりですごくわかりやすく、村人たちの英語も、日本語訛りもあって私たちには聞き取りやすいです。
鎖国時代にキリスト教が弾圧され、踏み絵が行われ・・・という私たちも知識としてはよく知っている話なので、ストーリーも頭に入ってきやすいです。
窪塚洋介さんが「キチジロー」という、ちょっと、いや、かなりのダメ男(劇中では重要な役)を演じています。
“Bless me, Padre, for I have sinned.”
(お許しください、神父様。私は罪を犯してしまいました)
と懺悔をしているシーンですが、現在完了もバッチリ使いこなしています。
通辞(通訳)の役を演じていたのは浅野忠信さんでしたが、さすがクォーター、英語がやっぱりすごく上手でした。
イッセー尾形さん演じる井上筑後守(いのうえちくごのかみ)は宣教師や信者に信仰を棄てさせようと様々な方法で追い詰めていくのですが、単なる悪人ではなく、いろんな葛藤のある人物として描かれていました。
英語のセリフが長いのもあって難しい役どころだったと思うのですが、スコセッシ監督からは演技が絶賛されたようです。(私は、ちょっと英語の話し方が仰々しすぎるかなと思いました・・・)
“The price for your glory is their suffering!”
(お前のせいで奴らは苦しむのだ)
下に載せている動画の1:20あたりで井上筑後守がこう主人公のポルトガル人宣教師ロドリゴに言い放つのですが、これがこの映画における象徴的な言葉です。
gloryというのは、キリスト教の福音を日本に広めるという宣教師たちの使命の遂行を指していますが、その代償(price)は信者となった日本の民の苦しみだということですね。
キリスト教への信仰心など持たなければ、信者たちは厳しい拷問の末に酷い死に方をすることもなかったのに、と。
「映画を字幕なしで楽しみたい!」
という目標を持っている方はたくさんいると思いますが、「沈黙」ならそれに近い感じが体験できる人も多いかもしれません。
ハリウッド側のキャストも、スパイダーマンのアンドリュー・ガーフィールド、スターウォーズのアダム・ドライバーにリーアム・ニーソンと豪華で、演技は本当に素晴らしいです。
映画『沈黙-サイレンス-』予告動画